研究課題/領域番号 |
23K15673
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 大樹 埼玉医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80922608)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / 脳動脈瘤破裂 / くも膜下出血 / マウスモデル / SIRT1 / 細胞老化 / 加齢 / 炎症 |
研究実績の概要 |
クモ膜下出血の主な原因は脳動脈瘤の破裂であり、30日以内の死亡率は45%と非常に高い。現在までに加齢と脳動脈瘤破裂の関連性が臨床研究において示唆されてはいるが、その分子生物学的な機序は明らかにされていない。本研究は、老化を抑制することが示唆されているSIRT1タンパク質に焦点を当て、加齢に伴うSIRT1活性の低下による細胞老化が脳動脈瘤破裂に関わる可能性について、内弾性板の破綻と高血圧の誘導を軸とする脳動脈瘤破裂モデルマウスを用いて解析するものである。本モデルマウスにSIRT1活性化剤や抑制剤を投与し、細胞老化と脳動脈瘤破裂の関係を評価する。さらに、組織特異的SIRT1欠損マウスを用いて、脳動脈瘤破裂に重要な脳血管構成細胞を同定する。本研究により、細胞老化を抑制するSIRT1活性と脳動脈瘤破裂の関係が明らかとなり、新しい脳動脈瘤破裂の予防薬として、SIRT1を標的とした薬剤開発の可能性について示すことができると考えられる。当初の実験計画に従い、若齢マウスにSIRT1抑制剤(EX-527)を投与して破裂率を比較したところ、有意に抑制剤投与グループでの脳動脈瘤破裂率が上昇した(vehicle vs. inhibitor, 58% vs. 88%, n = 17 vs. 18)。また、RT-PCRでは、抑制剤投与群のCircle of Willisには炎症のマーカーでもあり、老化関連因子でもある、IL-6やMMP-9の発現が亢進していることが明らかになった。上述の結果は予想通りのものであり、今後の実験計画をスムーズに進めることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた実験順序とは若干の誤差があり、結果の出るタイミングにズレが生じている。しかし、他の実験も並行して進めることができており、比較的予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、高齢マウスを用いて脳動脈瘤を誘発し、SIRT1を特異的に活性化する薬剤(SRT1720)を投与して、脳動脈瘤破裂抑制効果を検討する。また、SIRT1活性化剤を投与した高齢マウスと若齢マウスを比較して、RT-PCRや免疫染色を行い老化関連マーカーの発現を評価する。さらに、組織特異性を評価するため、遺伝子欠損マウスを用いて、脳血管組織において、どの細胞のSIRT1の発現低下が脳動脈瘤破裂に影響するかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳動脈瘤誘導に必要な薬剤であるDOCAは米国から購入しているが、生産側の都合で納期に時間がかかっている。そのため、当該年度で精算されずに次年度へ繰り越すこととなった。納品され次第、予定通り実験が進められる状態であり、使用計画ならびに使用予定には変更ない。
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