有限要素解析を用いて脊椎骨盤固定術後の股関節に加わる応力を解析した。結果として強固な骨盤固定を施行すると股関節への応力が増加し、弱い骨盤固定や骨盤固定を回避すると股関節への応力集中を回避することができた。これを英文紙に投稿しアクセプトされた。これ用いて脊椎骨盤固定術後の変形性股関節が隣接関節障害であるという新たな疾患を提唱することができた。 しかしながら一方で、本病態はいまだ予防法が確立していないため喫緊の課題となっている。われわれの研究結果によれば脊椎骨盤固定術後の変形性股関節の進行率は13%であり、新規発生率は11%であった。これは脊椎固定術後の隣接椎間障害という椎間板変性や局所後弯を呈する同様の病態とほぼ同等程度の発生率であったことからも成人脊柱変形手術後の見逃すことができない合併症の一つとしてとらえるべきである。 日常で立ち上がりや歩行動作は、静的なX線画像には反映されないことから、骨盤固定が股関節にどのように影響するかの動態評価(生体力学的解析)によりLong Fusion後の股関節症の発生メカニズムの解明を行ってきた。その中で一般的な歩行動作よりもより深い股関節の屈曲が必要とされる座位姿勢からの立ち上がりや階段昇降において股関節により負荷がかかっていることを明らかにした。今後は動作解析を用いて股関節の応力が低下するような立ち上がり方を提唱し、予防法を確立したいと考えている。
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