研究課題/領域番号 |
23K15754
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
沖田 和貴 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (90933747)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 免疫療法 |
研究実績の概要 |
免疫療法の登場により多くの癌種で有効性が示されているが、未だ有効なバイオマーカーがないため、過半数以上には奏効せず大きな問題となっている。近年、腸内細菌叢が免疫環境を調整し免疫療法の効果に関与する可能性が報告されたことから、薬剤による腸内細菌叢の異常が免疫療法の効果に関係しているのではないかと考えた。現在、抗生剤やプロトンポンプ阻害薬(PPI)、ステロイド等がその原因薬剤と考えられているが、そのメカニズムは明らかではない。我々は免疫グロブリンの糖鎖変異が診断や再発に関与することを報告しており、腸内細菌叢による免疫環境の調整を考えると、免疫グロブリンの糖鎖変異は有用なバイオマーカーとなりえる。以上より、本研究では臨床サンプルとマウスモデルを用いて、薬剤による腸内細菌叢の異常が免疫療法の効果に与える影響について検討し、免疫療法と競合する薬剤の同定、並びにそれら薬剤の投与により変化する免疫学的バイオマーカーの開発を目的とする。 本研究では、免疫療法を受けられた患者の臨床データを用いて、腸内細菌叢に影響がある薬剤の使用と免疫療法の効果について検討する。また癌細胞を移植した担癌マウスモデルを用いて、同様の現象が得られるのかを検討する。その際の腸内細菌叢の変化、さらに複数の薬剤を併用した場合の変化等についても検討を行う。得られた結果をもとに、臨床サンプルを用いた腸内細菌叢と免疫グロブリン糖鎖の解析を行い、効果予測に有用なバイオマーカーの開発を行う
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿路上皮癌と腎細胞癌を対象として、免疫療法を施行した患者の臨床データを用いて、PPIや抗生剤の使用が抗腫瘍効果や免疫関連有害事象の発現と相関があるかを検討する。背景差を調整するためプロペンシティスコア逆数補正法を用いて解析している。臨床データの集積と同時に、マウスモデルを用いた解析を開始している。担癌マウスモデルを作成し、約2週間のPPI投与モデル、抗生剤投与モデル、PPI+抗生剤投与モデルを作成し、これら薬剤投与群と非投与群の腸内細菌叢の違い、免疫グロブリン糖鎖の違いについて検討している。更にPD1もしくはPDL1を用いた免疫療法を開始し、抗腫瘍効果と治療後の腸内細菌叢、免疫グロブリン糖鎖の違いについてコントロール群と比較している。
|
今後の研究の推進方策 |
尿路上皮癌と腎細胞癌を対象として、免疫療法を施行した患者の臨床データを用いて、PPIや抗生剤の使用が抗腫瘍効果や免疫関連有害事象の発現と相関があるかの検討を継続する。臨床データの集積と同時に、マウスモデルを用いた解析を開始する。担癌マウスモデルを作成し、約2週間のPPI投与モデル、抗生剤投与モデル、PPI+抗生剤投与モデルを作成し、これら薬剤投与群と非投与群の腸内細菌叢の違い、免疫グロブリン糖鎖の違いについて検討する。更にPD1もしくはPDL1を用いた免疫療法を開始し、抗腫瘍効果と治療後の腸内細菌叢、免疫グロブリン糖鎖の違いについてコントロール群と比較している。今後、マウスモデルでの結果を踏まえ、臨床サンプルでの腸内細菌叢と解析を行う。免疫療法前・中・後の患者を対象に腸内細菌叢と免疫グロブリン糖鎖の解析を行い、臨床的効果とバイオマーカーの有用性について検討する。更に、腸内細菌叢と免疫グロブリン糖鎖を用いたシンプルな効果予測モデルを開発する。また同定された細菌叢や糖鎖分子から、想定される免疫反応の機序について追加検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物価の高騰により、予定した実験を次年度に延長したため、次年度使用額が生じたが、実験計画を調整し今後適正に使用する予定である。
|