研究課題
進行性尿路上皮癌の治療は、免疫チェックポイント阻害薬 であるペムブロリズマブ(Pembrolizumab) の登場によって劇的に変化した。一方、その奏効率は2割程度にとどまるため、レスポンダーとノンレスポンダーを選別するコンパニオン診断法の確立が喫緊の課題となっている。Pembrolizumabの効果は、PD-L1発現などの「腫瘍因子」、性差や加齢などの「宿主因子」、併用薬剤などの「外部因子」が、複合的に影響しあって規定されている。特に、宿主・外部因子に関しては、併用薬剤や生菌製剤との相互作用も含めた腸内細菌叢が、最近大きな注目を集めている。本研究は、腫瘍・宿主・外部の3因子すべてに着目した包括的な検討を行い、進行性尿路上皮癌に対する Pembrolizumab のレスポンダー・ノンレスポンダーを選別する最適な予測モデルの構築を目指している。これまでの実績としては、Pembrolizumab療法を受けた進行性尿路上皮癌の多施設コホートを用いて、併用薬剤(抗生剤、プロトンポンプ阻害剤、ステロイド)の有無と、Pembrolizumab療法の効果の関連を報告した(Taguchi, Immunotherapy 2023)。さらに、進行性尿路上皮癌のPembrolizumab投与症例において生菌製剤であるCBM 588の併用が予後と腸内細菌叢に及ぼす効果を検討するランダム化比較試験を立ち上げた(jRCTs031220689)。このほか、Pembrolizumab療法の後治療の検討や(Taguchi, Int J Urol 2023)、Pembrolizumab療法に関する総説(Taguchi, Jpn J Clin Oncol 2024)なども出版した。今後も継続して研究を発展させていく方針である。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度は、Pembrolizumab療法を受けた進行性尿路上皮癌242例の多施設コホートを用いて、併用薬剤(抗生剤、プロトンポンプ阻害剤、ステロイド)の有無と、Pembrolizumab療法の効果の関連を検討した。より具体的には、これら3剤からなる予後モデルであるdrug score (Buti, Eur J Cancer 2021)を本コホートにおいて検証した。その結果、drug scoreは、PFS・OSともに予後と有意に相関していた。さらに、heterogeneous treatment effect (HTE)解析を用いて、drug scoreと各臨床病理学的因子との相互作用を調べたところ、原発巣(上部尿路・膀胱)が最も強く相互作用していた。これに基づき原発巣ごとのサブグループ解析を行ったところ、膀胱癌ではdrug scoreによる予後選別が良好なのに対し、上部尿路癌では予後選別が不良であることを見出した(Taguchi, Immunotherapy 2023)。一方、生菌製剤の併用により免疫チェックポイント阻害剤の効果が高まる可能性が、最近報告されている(Dizman, Nat Med 2022)。これを受け、進行性尿路上皮癌のPembrolizumab投与症例において酪酸菌製剤であるCBM 588の併用が予後と腸内細菌叢に及ぼす効果を検討するランダム化比較試験を立ち上げた(jRCTs031220689)。現在、順調に症例集積をおこなっている。上記の他に、Pembrolizumab療法の後治療の検討や(Taguchi, Int J Urol 2023)、Pembrolizumab療法に関する総説(Taguchi, Jpn J Clin Oncol 2024)などを出版した。今後も上記を継続しつつ、研究を発展させていく方針である。
上記の通り研究は順調に進捗しているため、今後も継続して研究を発展させていく方針である。今後は、上記のランダム化比較試験「進行性尿路上皮癌のPembrolizumab投与症例においてCBM 588併用が腸内細菌叢と予後に及ぼす効果を検討する前向き臨床研究」(jRCTs031220689)の症例集積をおこない、目標症例数(30例)に到達したら解析を行う方針である。上記のほか、Pembrolizumab療法がPDとなった後も同治療を継続した場合(Pembrolizumab beyond progression)の検討や、Pembrolizumab療法の後治療についての多施設コホートを用いた検討なども計画中である。
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Japanese Journal of Clinical Oncology
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