当教室では、癌患者の末梢血中に存在する循環癌細胞 (circulating tumor cells: CTCs)についてマイクロフィルター法やCD45 negative selection法によるCTCs分離を行い、遺伝子学的・分子生物学的解析等を行いその生物学的特徴について報告してきたが、一方で癌微小環境を担う癌関連線維芽細胞(cancer associated fibroblasts: CAFs)も、様々な液性因子を介して癌細胞とクロストークすることで転移形成・治療抵抗性に関与することが知られている。またCAFsがCTCsと共に血液中にも存在・遊走することで、血液中においても癌微小環境が形成され、更に転移形成に関与しているのではないかと推測している。そこでCTCsと並行してcirculating CAFsについても同定・生物学的特徴の解析を行うことを目的とした。本年度はcCAFsの同定法の確立を目的とした実験を行った。末梢血中を循環しているCAFsはごく微量であり、その同定方法として確実な手法はないため、CTCs単離で用いたCD45-depletion法の応用を試み、線維芽細胞関連遺伝子(FAP/PDGFRA/ACTA2)による遺伝子学的検索を行った。まず、Preliminary studyとして培養したCAFsを健常人より採取した血液サンプルに濃度を変えてspikeし、CD45-depletion法を用いて白血球を除去した後にPCRを用いて前述の3遺伝子について解析したところ、FAPにおいてCAFs濃度とCt値の相関を認め、cCAFs検出のマーカーとして選択した。頭頸部扁平上皮癌患者全77例から採取した血液サンプルを用いて同様の解析を行なったところ、FAPは15例(19%)において陽性を認めた。
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