研究課題
本研究の目的は、アレルゲン(花粉やダニなど)や薬剤・化学物質の点鼻により誘導される鼻炎モデルを解析し、MRGPRX2/Mrgprb2の関与する鼻炎の病態を解明することである。野生型(WT)、Mrgprb2ノックアウト(Mrgprb2-KO)、MRGPRX2ノックイン(MRGPRX2-KI)マウスに対して、ブタクサ花粉を連日点鼻して、2週間後の鼻炎症状のくしゃみ頻度を解析した結果、MRGPRX2-KI>WT>Mrgprb2-KOマウスの順にくしゃみ頻度が多かった。このとき、血清中ブタクサ花粉特異的IgE値は上昇しているがマウス間で有意な差は認められなかった。鼻組織のマスト細胞の脱顆粒率に関してはMRGPRX2-KIマウスが他のマウスより多く、マスト細胞数に関してはMRGPRX2-KIマウスが他のマウスより多い傾向が認められた。次に、これらのマウスに対してダニ抗原(Der p)を連日点鼻して、2週間後のくしゃみ頻度を解析した結果、くしゃみ頻度はMRGPRX2-KI>WT>Mrgprb2-KOマウスの順に多かった。血清中Der p特異的IgE値に有意な差は認められなかった。ブタクサ花粉の場合と同様に、鼻組織のマスト細胞の脱顆粒率に関してはMRGPRX2-KIマウスが他のマウスより多かった。ブタクサ花粉やダニ抗原の連日点鼻により誘導される鼻炎症状は抗原と特異的IgEによる鼻マスト細胞の脱顆粒に依存すると考えられるが、MRGPRX2/Mrgprb2、特に、MRGPRX2はマスト細胞の脱顆粒を亢進させて鼻炎を増強することが示唆された。また、ブタクサ花粉の一回点鼻でもMRGPRX2-KIマウスではくしゃみが誘導されることが判明した。従って、ブタクサ花粉はIgE非依存的に鼻炎を誘導することが明らかになった。現在、その分子機序の解明に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
ブタクサ花粉やダニ抗原の連日点鼻により誘導される鼻炎がMRGPRX2により増強されることが示された。このモデルを解析することにより、IgE依存的及び非依存的な鼻炎の病態を解析することが可能になったので、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
WT、Mrgprb2-KO、MRGPRX2-KIマウスの鼻組織におけるマスト細胞や三叉神経節細胞を解析することで、MRGPRX2依存的な鼻炎の新規病態を明らかにする予定である。
本年度は、ブタクサ花粉とダニ抗原の連日点鼻による鼻炎の解析が主体となった。ブタクサ花粉以外の花粉の連日点鼻による鼻炎モデルの解析は次年度に実施されるため、次年度使用額が生じた。残額と翌年度分として請求した助成金を合わせて、MRGPRX2に依存する鼻炎の新規病態機序を解明する予定である。
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