研究課題/領域番号 |
23K15874
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
井上 彰子 東邦大学, 医学部, 助教 (40770475)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 病原性T細胞 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、T細胞分化に重要な働きをする核内転写制御因子Special AT-rich sequence binding protein-1 (SATB1)を血球系細胞特異的に欠損する SATB1cKOマウスを用いて、免疫寛容成立のメカニズムを解析してきた。SATB1cKOマウスは胸腺での中心性免疫寛容の破綻がおこり、生後早期からシェーグレン症候群(Sjogren's syndrome; SS)様の唾液腺炎、涙腺炎を呈し、加齢と共に全身性エリテマトーデス(SLE)様の全身性自己免疫疾患を発症することが明らかとなっている。本年度は、SATB1cKOマウスにSS様病態を発症させる病原性T細胞がどのようなT細胞かを明らかにすることを目的として検討を行った。CD4+T細胞または、CD8+T細胞を除去するために、生後3週齢のSATB1cKOマウス(SS様病態を発症前)腹腔内に抗CD4抗体、抗CD8抗体を継続投与し、経時的に唾液と血清を採取した。マウスが生後12週齢の時点で抗体投与を停止し、唾液量の測定、血清中のトリプトファン(Trp)とキヌレニン(KYN)量を測定した。 その結果、抗CD4抗体投与群において唾液分泌量が非投与群に比べて有意に増加した。一方、抗CD8抗体投与群では、抗CD4抗体投与群よりも唾液分泌量は低下していたが、非投与群よりは増加していた。さらに血清中Trp量とKYN量を解析したところ、抗CD4抗体投与群、抗CD8抗体投与群共に、非投与群に比べてTrp量が増加し、非投与群で認められるTrp-KYN代謝亢進が抑制された。これらの結果は、SATB1cKOマウスにおけるSS様病態発症初期には、CD4+または、CD8+自己反応性T細胞による組織破壊が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SATB1cKOマウスの繁殖に時間がかかり、必要なマウスの数を整えるのに時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、SS様病態が発症はしているが、重症化する前の生後6-7週齢SATB1cKOマウス腹腔内に抗CD4または、抗CD8抗体を投与し、重症化や続発症を抑制できるかの検討を行う。また、病原性T細胞が多く存在すると考えられる唾液腺や頸部リンパ節のT細胞を中心に、パーフォリン、グランザイムBの発現を調べ、細胞傷害活性の検討を行う。特に影響が大きかった抗CD4抗体投与の結果をもとにして、細胞傷害性CD4+T細胞については細胞表面分子や細胞内因子について詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス繁殖に時間を要し、繁殖・飼育に関する費用が少額であったため未使用額が生じた。 次年度は繰越分とあわせて、主にマウスの飼育費用、動物実験に関する試薬、解析費、学会旅費などに使用を予定している。
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