研究課題/領域番号 |
23K15899
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
外村 宗達 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00779796)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 嗅球 / 嗅覚障害 / 電気生理 / THニューロン / 僧帽細胞 / パッチクランプ / 鼻閉塞モデル |
研究実績の概要 |
嗅覚神経回路の異常による嗅覚障害は、時にQOL の低下やうつ病をまねく他、新型コロナウィルスの後遺症でも注目され社会的な問題となっている。匂い情報は嗅上皮の嗅細胞から嗅球表層の糸球体に入り、傍糸球体細胞を介した情報処理をされ、二次ニューロンである僧帽/房飾細胞から嗅皮質へと伝達され匂いとして認識される。匂いの識別や感度といった嗅球の匂い情報処理は様々な介在ニューロンが関与する事が知られている。特に嗅神経から直接入力を受ける傍糸球体細胞のドーパミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase, TH)陽性ニューロンが匂い識別に関与する。さらに、このTHニューロンは匂い刺激の遮断によって低下し中枢性嗅覚障害を引き起こす。本研究室ではこれまで、TH に緑色蛍光タンパク質を発現した遺伝子改変マウス(TH-GFPマウス)を用いた長期鼻閉モデルマウスを作製し、嗅球内のTH ニューロンの発現が減弱することを明らかにした(Taniguchi et al, 2014)。 初年度は、このTHニューロンの長期鼻閉塞後の電気生理学的特性を解析するため、ホールセルパッチクランプ記録を行うためのセットアップを一から構築し実験を行った。方法は、鼻閉塞後4週経過したTH-GFPマウス(雄)の急性嗅球スライス標本を作製し蛍光顕微鏡下でGFP陽性ニューロンを同定しホールセルパッチクランプ記録を行った。その結果、長期鼻閉塞群のTHニューロンの活動電位の半値幅が対照群と比べて有意に増加していることが明らかとなった。 今後は、嗅神経などの電気刺激を用いてTHニューロンや僧帽細胞等の応答を電気生理学的に記録し、中枢性嗅覚障害における嗅球のニューロンネットワークの解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホールセルパッチクランプ記録を行うための装置の構築が完了し、THニューロンの記録も順調に行えている。今後は僧帽細胞の記録と同時に嗅神経刺激を行い実験を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた通り、長期鼻閉塞による中枢性嗅覚障害における嗅球神経回路の電気生理学的特性の解析をホールセルパッチクランプ記録を用いて行う。次年度は以下の課題に取り組む。 1)嗅神経刺激時のTHニューロンや僧帽細胞のEPSC、IPSCを記録し長期鼻閉塞によるその変化を明らかにする。本研究では幼弱マウスと比べ酸素需要の高い生後三か月の成獣マウスを使用するため良い状態の急性スライス標本を得ることが重要となってくる。そのため、スライス作製における条件検討が必要だと予想される。 2)神経トレーサーを記録ニューロンに注入し生理学的な変化と併せて形態学的な変化も明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホールセルパッチクランプ記録をするための装置の購入にあたって、想定していたよりも少額で構築できたため。次年度使用額は温度コントローター等、電気生理学的な実験に使用する装置をより充実させるために使用する。
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備考 |
教室HP https://m.kawasaki-m.ac.jp/anatomy/
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