研究実績の概要 |
緑内障濾過手術の成績は創傷治癒過程の一つである組織の線維化に大きく依存する。他臓器、他疾患において、線維化のメカニズムは多くの報告があるが、濾過手術後の線維化については生理活性物質を含有する房水の存在やマイトマイシンC処理など、独特の環境を考慮する必要があるため、結膜を用いて独自の検証が必要である。濾過手術を動物モデルで再現するため、眼球サイズと経済性からウサギを用いた。まず条件検討を行うため、白色家兎を屠殺後に結膜組織を採取し、コラゲナーゼで10分処理した後、ピペッティングと遠心を随時加えながら、トリプシン/EDTA、DNA分解酵素で順に処理し、セルストレイナーを通すことで単一細胞化した。複数回トライした結果、生細胞率は悪くなかったものの、取得細胞数はサンプルあたり300,000-400,000個と、やや少ないと判断された。遠心条件の変更や、コラゲナーゼ処理を15分にするなど、条件を見直してさらに複数回施行したところ、サンプルあたり約1,000,000個前後と取得細胞数が増加し、生細胞率も70-80%と許容範囲内だった。したがって、ウサギ結膜組織を単一化する過程について、少なくとも最低限のレベルはクリアできたと考えられる。また、ウサギに静脈麻酔を行い、ヒトと同様の0.04%マイトマイシンC併用で虹彩切除も伴う緑内障濾過手術(トラベクレクトミー)を試みた。トレーニングの結果、術前眼圧15mmHgに対し、術後4日目は7mmHg、術後17日目で8mmHgと眼圧下降をえることができた。結膜に濾過胞を形成していることも確認できた。
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