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2023 年度 実施状況報告書

PPARαに注目した病的近視のメカニズムの解明と新規治療薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K15938
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

富田 洋平  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00528200)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワード強度近視 / 病的近視 / PPARα / フェノフィブラート / 近視性脈絡膜新生血管
研究実績の概要

現在、アジアにおける近視の患者数は増加の一途を辿っている。特に、成人の強度近視・病的近視は近視性脈絡膜新生血管、網膜分離症、近視性黄斑変性、及び緑内障などの合併症を引き起こすことがあり、日本では視力障害の主要な原因の一つとなっている。これらの合併症による視覚障害は、主に生産年齢層で発生し、社会経済に深刻な影響を与えている。強度近視・病的近視の患者数は今後さらに増加すると予想され、その影響は増大することが予想される。しかしながら、強度近視と病的近視の区別、そのメカニズムや治療法については、未だ不明な点が多い。近年、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)αアゴニストが近視予防に有効であることがギニアピッグを用いた研究で報告された。本研究では、新たに成体の強度近視・病的近視モデルマウスを開発し、PPARαが強度近視の進行にどのように作用するかを明らかにする。成人近視のメカニズムの解明と、新規治療法の開発可能性を探求することを目的とする。
初年度では、成人強度近視モデルの開発に取り組んだ。現在までに存在する近視モデルは、すべて幼年期のマウスを用いたもので、成人の近視を模倣するものではない。そこで、我々は成体マウスを用いた近視モデルを開発した。このモデルでは、近視化を維持し、さらに網膜の菲薄化が認められ、成人の強度近視を模倣したモデルであると考えられた。
二年度では、PPARαアゴニストの近視抑制効果について検討する。PPARαアゴニストであるフェノフィブラートを投与し強度近視の抑制効果を評価する。また、効果が認められた場合には、分子生物学的手法を用いてそのメカニズムの解明を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一年目では、病的近視モデルの開発に取り組んだ。現存する近視モデルは、全て幼若マウスを使用したものであり、成人の近視を模倣するものではない。そのため、我々は3週齢から9週齢までのマウスに-30Dレンズを使用して近視を誘導し、成体マウスの近視モデルを作成した。このモデルは、9週齢において、眼軸の伸長、屈折の近視化や、脈絡膜菲薄化など、成人の強度近視の特徴を示している。さらに、光干渉断層計(OCT)で網膜内層の菲薄化を認め、成人の強度近視を模倣したモデルであると考えられる。

今後の研究の推進方策

初年度に成体マウスモデルの確立を達成したことを踏まえ、2年度ではフィブラートの成人近視の抑制効果に焦点を当てる。具体的には、フェノフィブラートを投与し、その近視抑制効果・形態、機能維持効果があるかどうかを評価する。その後メカニズムを明らかにするために分子生物学的手法を適用する計画である。
以下具体策である。まずは、フェノフィブラートの投与方法、投与量、投与頻度、および治療期間を具体的に設定する。その後、初年度と同様に、眼軸長、屈折値、脈絡膜厚を測定する。次に、OCTによる網膜厚の変化を測定し、網膜機能の評価は、網膜電図による応答の変化を分析することで、治療による形態学的・機能的改善を定量化する。さらに、効果が確認された場合、フェノフィブラートが網膜や脈絡膜のどの細胞にどのような分子生物学的変化を引き起こすのか、遺伝子発現の変化やシグナル伝達経路の活性化などを明らかにする。これらのアプローチにより、フェノフィブラートが成人近視抑制に及ぼす影響の全体像をより深く理解し、将来的には効果的な治療法の開発に寄与することを目指す。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Nicotinamide mononucleotide, a potential future treatment in ocular diseases2024

    • 著者名/発表者名
      Deokho Lee, Yohei Tomita, Ari Shinojima, Norimitsu Ban, Shintaro Yamaguchi, Ken Nishioka, Kazuno Negishi, Jun Yoshino, Toshihide Kurihara
    • 雑誌名

      Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol

      巻: 262(3) ページ: 689-700

    • DOI

      10.1007/s00417-023-06118-w

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular and Cellular Regulations in the Development of the Choroidal Circulation System2023

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Imanishi , Yohei Tomita, Kazuno Negishi, Kazuo Tsubota, Toshihide Kurihara
    • 雑誌名

      Int. J. Mol. Sci.

      巻: 24(6):5371 ページ: -

    • DOI

      10.3390/ijms24065371.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] In vivo noninvasive mitochondrial redox assessment of the optic nerve head to predict disease2023

    • 著者名/発表者名
      Bertan Cakir, Yohei Tomita, Hitomi Yagi, Padraic Romfh, William Allen, Minji Ko, Peili Chen, Zhongjie Fu, Daryoosh Vakhshoori, Lois E H Smith
    • 雑誌名

      PNAS Nexus

      巻: 2(5):pgad148 ページ: -

    • DOI

      10.1093/pnasnexus/pgad148

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Pemafibrate, a potent selective peroxisome proliferator-activated receptor α modulator, a promising novel treatment for ischemic retinopathy?2023

    • 著者名/発表者名
      Deokho Lee, Yohei Tomita, Kazuno Negishi, Toshihide Kurihara
    • 雑誌名

      Neural Regen Res

      巻: 18(7) ページ: 1495-1496

    • DOI

      10.4103/1673-5374.360319

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A case of bacterial endophthalmitis 58 years after a perforated scleral wound in childhood2024

    • 著者名/発表者名
      Yohei Tomita
    • 学会等名
      Fuji Retina
    • 国際学会
  • [学会発表] ラマン分光法を用いた視神経乳頭のミトコンドリアの酸化還元評価による病態予測2023

    • 著者名/発表者名
      富田洋平
    • 学会等名
      第39回日本眼循環学会
  • [学会発表] フィブラート系薬剤による病態制御2023

    • 著者名/発表者名
      富田洋平
    • 学会等名
      第29回日本糖尿病眼学会総会
  • [学会発表] 強度近視の眼軸長、近視性黄斑症国際分類と脈絡膜厚の関連2023

    • 著者名/発表者名
      緑川桃佳, 森紀和子, 富田洋平, 張エン, 根岸一乃, 坪田一男, 栗原俊英
    • 学会等名
      第5回日本近視学会総会
  • [学会発表] 眼動脈の眼杯到達に先行して脈絡膜の血管内皮細胞は出現する2023

    • 著者名/発表者名
      今西哲, 富田洋平, 根岸一乃, 坪田一男, 栗原俊英
    • 学会等名
      第39回日本眼循環学会
  • [産業財産権] 近視動物モデルの作製方法2024

    • 発明者名
      富田洋平,栗原俊英,楊雅靜,有田治正
    • 権利者名
      富田洋平,栗原俊英,楊雅靜,有田治正
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      P23569RT

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公開日: 2024-12-25  

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