研究実績の概要 |
ヒト脈管奇形の病態を解明するために、マウスモデルを使用した病態形成機構の解析を継続している。また、病態解明のためにヒト胚を用い、リンパ管の形成過程を詳細に調べ、論文として発表を行った(Yamaguchi et al., The EMBO J, 2024)。本研究では、体幹部と比較した頭頸部リンパ管の発生の特殊性を明らかにした。頭頸部リンパ管は体幹部と比較して時間をかけて管腔構造を形成し、成熟していく事が明らかになった(体幹のリンパ管は1週間程度の時間経過で完成するが、頭頸部のリンパ管は管腔構造を形成するのに1ヶ月程度かかる)。この発生時間が長い事が、エピジェネティックな変化や外部環境による影響を受けやすくしており病態の形成になんらかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。 さらにヒト脈管奇形の病態や病変形成に関与するシグナルを同定するために、ヒト脈管奇形で高頻度に検出される体細胞変異を導入した遺伝子改変マウスを使用し、組織学的解析、遺伝子発現解析を行っている。本解析でヒト脈管奇形の解剖学的な特色を反映した脈管奇形を再現することに成功しており、さらに変異遺伝子により誘導されるシグナル変動を解析することにより、なぜ病変が生じるのかをつきとめるように研究を進めている。また、変異シグナルを抑制する化合物を用いる事で病変の縮小効果があるのかマウスモデルへ薬剤を投与し検討中である。本実験により、難病である脈管奇形に対し、分子的な病態機序に基づく新たな薬剤開発が期待される。
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