研究課題/領域番号 |
23K15958
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
花井 潮 東海大学, 医学部, 准教授 (50548469)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 再生促進薬 / ミズクラゲコラーゲン / 人工真皮 / 細胞生着促進 / 難治性皮膚潰瘍治療 |
研究実績の概要 |
本研究は、①新型人工真皮移植の長期経過観察実験、②新型人工真皮移植と薬剤投与による複合治療効果の比較実験、③糖尿病モデルマウス環境下の新型人工真皮移植実験から構成される。2023年度の研究の進捗状況を以下に示す。 研究初年度であったため、まずは ①新型人工真皮移植の長期経過観察実験 の立ちあげとして、二重成型法を用いて作製したコラーゲンスポンジを新型人工真皮として適用する予備実験を入念に行った。長期の人工皮膚生着実験系を確立すべく作成した管理マニュアルに沿った動物実験を行い、マウスで人工真皮の生着までの時系列データを安定して得られるようになり、本格的な動物実験を行う準備を完了させた。(1)組織学的な再建組織の評価。HE染色により新型人工真皮は移植後1週間以内で人工コラーゲンマトリックスが膨潤・展開し生来真皮を模倣した細胞外基質を再現できることを確認した。従来品は同様の状態まで3週間以上を要した。(2)CD31抗体染色による血管進入評価。新型人工真皮は3週間で肉芽組織が発達し多数の血管進入を認めた。同時期の従来品は人工マトリックスの展開までであり、炎症細胞が多く血管は乏しかった。炎症性マクロファージの種類の検証は次年度行う事とした。 ②新型人工真皮移植と薬剤の投与実験。新型人工真皮(φ6 mm)を貼り付ける際にフィブラストスプレー,5μlと生理的食塩水を滴下する実験を行った。フィブラストスプレー滴下群により多くの線維芽細胞の遊走を認めたが炎症細胞の混入も多くなり、化膿する事例も増加した。マウス型のbFGF溶液で検証をやり直す必要がある。 ③糖尿病モデルマウス環境の検討。今年度に得られた管理マニュアルを基に、無菌実験区画内に糖尿病マウスの手術と経過観察の出来る区画を設けた。健常マウスを用いた予備実験も終了しており、2024年度から糖尿病マウスで同じ実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①の実験課題と②の実験課題は初めて動物実験を行う実験室立ち上げの諸準備もあり、スタートに遅れがあったが実験成果は順調に得られている。③の実験のためには糖尿病マウスに対する配慮が必用であるため、新たにSPFグレードの動物実験室区画内に飼育室と手術室を整備するよう指導があり、個々に搬入する実体顕微鏡や記録装置も個別に滅菌する行程が入り、実験の開始が半年待たされることになった。今年度は無菌区画の新実験室に糖尿病マウスを入れることなく、まずC57BL健常マウスを用いて実験操作のシミュレーションを行い、万全に機能することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
①新型人工真皮移植の長期経過観察実験の続行。治癒後3、5、12ヶ月後に牽引負荷による器械的強度測定を行い、既存人工真皮と比較する。①のデータが揃ったら、次段階として②新型人工真皮移植と薬剤投与による複合治療効果の比較実験に着手する。薬剤付加を行い、2023年度の成績と比較して複合的効果を評価する。 ③糖尿病モデルマウス環境下の新型人工真皮移植実験を開始する。まず、糖尿病モデルマウス(BKS lepr- dB/dB) を用いて健常マウスと同様の評価系で実験を行い、再生能力の衰えた病的な事例の評価系とする。初年度の ①実験は基本的なデータ収集として重要であるため、2024年度にも重点的に行い、②と③の実験は2024年度以降が本番となる。③の実験はより長く行いたいので、可能な限り前倒しする。本実験の到達目標は実用化にあり、必要な産学共同研究のアプローチを並行して行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の課題③実験の待機によって、実験費用の持ち越し分が生じた。本実験はマウスを用いる実験のため、他の実験試薬購入を優先させて予算を執行することは出来ないので、次年度以降に用いられるマウスの購入代金を上積みして持ち越すことした。糖尿病モデルマウスの単価の高騰もある。2024年度は③の実験に加え、②新型人工真皮移植と薬剤投与による複合治療効果の比較実験の追加も行っていくため、動物の購入と飼育管理費用として2024年度予算の次年度使用額に充当する。
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