研究課題/領域番号 |
23K15968
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小湊 広美 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (60964567)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 糖尿病と歯周病 / 2型糖尿病 / 歯肉線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ビグアナイド系糖尿病治療薬であるメトホルミン投与が歯肉創傷治癒における結合組織にもたらす効果を網羅的な遺伝子解析から検討し、さらに高血糖によって生じるコラーゲン病的架橋及びコラーゲン産生能の低下に対するメトホルミンの影響を歯肉線維芽細胞で検索することである。メトホルミンが1型糖尿病モデルラットの創傷治癒を促進するという研究は皮膚科領域では報告例がある(Yu J et al. Cardiovasc Diabetol. 2016)が、口腔領域の創傷治癒に及ぼす影響への解析は、申請者の過去の研究のみである(Kominato et al. J Periodontol. 2022)。本研究は、メトホルミンが口腔内領域の創傷治癒に及ぼすメカニズムをコラーゲン組織の病的架橋の観点から検索する点に学術的独自性がある。さらに、高血糖条件におけるメトホルミン投与が結合組織産生機能を改善するという仮説を立てており、糖尿病モデル動物により検証をすることは、糖尿病患者の歯科治療時の歯肉の創傷治癒を想定したトランスレーショナルリサーチとしてだけでなく、広く使用されている薬品の新たな付加効果の探求として創造性が高いと思われる。現在、糖尿病患者及び境界型糖尿病患者はわが国において増加傾向にあることが指摘されており、メトホルミンが糖尿病患者の歯周組織に及ぼすさらなる影響を明らかにすることができれば、糖尿病患者の歯周病治療における新規の所見として意義は大きく、臨床的に波及効果も大きいと想像される。当該年度では、ヒトからの歯肉線維芽細胞の単離を行い、今後の実験のための培養条件の検討を行っている。また、東京医科歯科大学動物実験委員会の承認が下りたため、動物実験の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯肉線維芽細胞を用いて、高血糖状態が歯肉線維芽細胞の増殖能や酸化ストレスによる遊走能にどのように影響をおよぼすかを、そのメカニズムを含めて検索している。 結合組織移植術を受ける全身的に健康な患者から同意のもと術中に採取したヒト歯肉結合組織から歯肉線維芽細胞を単離して初代培養を行い、対照培地(グルコース濃度:15mM)で培養し、同培養液のグルコース濃度を50mMに調整して高血糖状態を想定して培養することを条件確定した。 解析として、細胞遊走能をin vitro wound healing assayにて評価し、高血糖状態にて細胞機能に障害が生じ、メトホルミン添加によりその障害が軽減されることを確認している。今後は対照群、高血糖群にメトホルミン添加を行った後、Ⅰ型コラーゲン、Ⅲ型コラーゲン、フィブロネクチン、MMP-13等の発現をリアルタイムPCR法およびウェスタンブロット法にて評価していく予定である。 動物実験は実験条件、手技の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験では、現在培養している歯肉線維芽細胞を用いて、対照培地(グルコース濃度:15mM)と高血糖培地(グルコース濃度:50mM)で培養したのちにメトホルミン添加を行いⅠ型コラーゲン、Ⅲ型コラーゲン、フィブロネクチン、MMP-13等の発現をリアルタイムPCR法およびウェスタンブロット法にて評価する。 動物実験で10週齢の時点でインスリン負荷試験、経口グルコース負荷試験により耐糖能異常、インスリン抵抗性が生じていることを確認した後、db/dbマウスを2週間のメトホルミン投与(250 mg/kg/d、経口投与)の有無の2群に分けた後に歯肉創傷の作製、組織学的、組織形態計測分析、発現変動遺伝子発現の解析、歯肉結合組織に蓄積したAGEs量にメトホルミンが及ぼす影響の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の歯周炎モデルの実施にあたっての検討や実験系の安定に時間を要し、細胞を用いたin vitroでの検討を先行しており、想定されていた動物を使用する実験が遂行しきれておらず購入物品が予定よりも少なかったため。 翌年度に行う予定の実験の物品購入に使用する予定である。
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