現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの癌腫で高頻度に認められるFAT1遺伝子変異「S3373X (stop codon)」を再現したノックイン(KI)マウスは、細胞外ドメインは翻訳されるが、膜貫通・細胞内ドメインは翻訳されない。興味深いことに、Fat1 KIマウスはホモ接合体では高率に重度の下顎・舌形成障害をきたすが、ヘテロ接合体では外観に目立った形態異常は見られない。ヘテロ接合体Fat1 KIマウスは、口腔がん患者に高頻度に見られる遺伝子異常を背景としており、ヒト口腔がんの多様な病態を再現しうる有用な解析モデルとなる可能性を有している。 令和5年度は、すでに作成済みのFat1 KIマウスのヘテロ接合体の雄性マウス90匹を被験群とし、16週間、100μg/ml濃度の4-NQOを飲水投与しその後、4-NQO投与を中止した。対象群は野生型マウスの雄性マウス90匹を用いた。被験群、及び対照群のマウスは8,16,24,29,32,34,37,40,43週齢でそれぞれ10匹ずつsacrificeして舌、肺、肝、膵、腎、大腸、小腸、脾臓、心臓、皮膚を採取し、10%中性緩衝ホルマリンで固定した。舌の腫瘍は大きなものについては細胞培養を行い、cell lineを樹立した。肝臓と肺は分子生物学的検索用に一部を液体窒素で凍結保存した。現在、ホルマリン固定標本はHE染色を施行し、形態学的解析を行なっている。また、免疫組織学的解析用に、未染標本を準備中である。 時間と労力が必要な動物実験と標本作成が終了しており、予備検討でKIマウスの発がん時期が早まる傾向も見出されていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
|