研究課題
口腔には免疫低下を背景に発症し、EBVMCU の近縁疾患と考えられる大型 B 細胞リンパ腫が他に二つある。免疫抑制薬 (MTX) の投与により生じる医原性の MTX-DLBCL と、加齢 (免疫老化) を主な原因とする EBV 感染を伴う非医原性の EBV+DLBCL である。これらは近縁疾患にも関わらず臨床経過が大きく異なり、EBVMCU のほぼ全例と MTXDLBCL の半数以上が休薬などの免疫抑制からの離脱で自然消退する一方、MTX-DLBCL の残り 4 割は自然消退せず、EBV+DLBCL と同様に免疫化学療法 (R-CHOP など) が必要になる。このような臨床経過の違いは、宿主の免疫力とリンパ腫細胞の増殖能や免疫逃避力のバランスの上に成り立っており、宿主の免疫監視・逃避機構を担う PD-1/PD-L1 経路を主軸とする腫瘍の免疫微小環境が深く関与しているものと考えられているが、これまで PD-L1 に関する知見は免疫組織化学を用いた検討に留まっており、詳細なゲノム解析には至っていない。本研究の目的は、EBVMCU とその近縁疾患 (MTX-DLBCL, EBV+DLBCL) との病態解明を通じ、これらの鑑別に有用なバイオマーカーの同定である。これまで、研究計画の①症例抽出、②遺伝子変異解析パネル作製、③臨床・病理学的データ抽出および解析、④PD-L1の免疫染色とFISH、⑤FFPEからDNA/RNAの抽出、⑥NGSによる遺伝子変異解析、⑦nCounterによる遺伝子発現解析までを終了し、現在は⑧プロファイル作製を行っている。
2: おおむね順調に進展している
これまで、研究計画の①症例抽出、②遺伝子変異解析パネル作製、③臨床・病理学的データ抽出および解析、④PD-L1の免疫染色とFISH、⑤FFPEからDNA/RNAの抽出、⑥NGSによる遺伝子変異解析、⑦nCounterによる遺伝子発現解析までを終了し、現在は⑧プロファイル作製を行っている。⑧が終了した後は⑨バイオマーカーの抽出と免疫染色を行うことで研究計画は終了の予定である。
当初の研究計画に則り研究を推進し、これまでの研究内容をより一層深めつつ、研究終了を図る。特に遺伝子変異解析、遺伝子発現解析を基としたバイオマーカーの抽出および、免疫染色を重点的に行う予定である。
当初の研究計画に比べ、解析対象の症例数が少数脱落したため、解析費用のコストが見積りより低くなったためである。脱落した症例数によって解析結果に影響は出ておらず、研究計画の想定内である。翌年度は解析により得られた遺伝子変異、遺伝子発現の結果をもとに、免疫組織化学的検索を主としたバイオマーカーの同定を行っていく予定である。
すべて 2024 2023
すべて 学会発表 (2件)