研究実績の概要 |
近年の細菌叢解析の技術的進歩により,口腔細菌叢と糖尿病の関連が明らかになってきた。我々はこれまでに,日本人高齢者の2型糖尿病患者と健常者の唾液細菌叢の違いを16Sメタゲノム解析および統計学的機械学習の手法を用いて明らかにしている。本研究では,日本とシンガポールの集団で2型糖尿病患者の口腔細菌叢の特徴を明らかにし,両集団の違いを検証することを目的とした。 本年度は,口腔サンプルの採取に着手した。サンプル採取の手法は解析結果に大きく影響を及ぼすことから,日本とシンガポールで共通の手法で行う必要がある。このためシンガポールの National Dental Centre Singapore, Department of Periodontal Unit, Dr. Chee Hoe Kit と共同研究契約を締結した上で,シンガポールと日本の間でオンライン会議を行い,サンプル採取方法や採取する時間,タイミングなどについて同じ条件になるように,十分な打ち合わせを行った。また,対象者の選択基準および必要な基本的属性などの情報についても検討を重ねた。日本人集団は,大阪医科薬科大学病院 歯科口腔外科に糖尿内科から紹介受診した教育入院目的の2型糖尿病患者と,糖尿病の既往のない健常対照者とした。シンガポールの集団は,National Dental Centre Singapore, Department of Periodontal Unitを受診した2型糖尿病患者および健常対照者とした。シンガポールで採取したサンプルを日本に郵送し,その一部について,16S メタゲノム解析を行い,細菌叢解析が可能であることを確認した。今後の研究を進めるための準備が整ったといえる。
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