研究課題/領域番号 |
23K16015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 恵莉 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (40822565)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
口腔や腸には500種類以上の常在菌が生息しており、複雑な細菌叢を有している。近年のマイクロバイオーム研究の進展により、腸や口腔は細菌叢の多様性によって恒常性 (ホメオスタシス) が維持されており、レッドコンプレックス細菌に代表される特定の歯周病原性細菌による病原性によって引き起こされると考えられてきた歯周病も、歯周プラーク細菌叢の構成バランス異常(Dysbiosis,ディスバイオーシス)によって宿主免疫が撹乱される疾患だと捉えられ始めている。腸内細菌叢のディスバイオーシスは炎症性疾患や代謝性疾患の病因としても知られており、腸管免疫への分化誘導作用も着目されている。これまでの研究実績では、野生型マウスの腸内細菌叢を国内大手マウス飼育業社間で比較したところ、細菌叢は施設間で大きく異なっており、潰瘍性大腸炎モデルのデキストラン硫酸ナトリウム誘導性腸炎に抵抗性を示す亜系統を発見した。腸炎抵抗性マウスでは腸管保護作用を有する酪酸産生性のRoseburia属細菌が有意に増加していた。逆に腸炎が重症化するマウスは、腸内細菌叢の2大門であるBacteroidota門とFirmicutes門のバランスが崩れ、90%以上をFirmicutes門が占めていたことを発見し、その成果を学会発表並びにGastro Hep Advancesにて報告した。国内のマウスの腸内細菌叢が飼育業社によって大きく違うことを初めて報告し、細菌叢研究のみならず、本邦でのマウス実験を行う研究者にとって重要な基礎データの報告となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BALB/c野生型マウスの腸内細菌叢と腸炎の重症度を日本SLC社、日本クレア社、チャールズリバー社の3社で比較した。まず、潰瘍性大腸炎モデルのデキストラン硫酸ナトリウム誘導性腸炎を3社のマウスに誘導し、腸炎の重症度を比較した。日本SLC社のマウスは、残り2社のマウスと比較して、腸炎の重症度である体重減少や、血便、大腸からの出血、大腸長さの短縮などの腸炎の臨床的スコアが有意に低かった。 次にそれぞれの飼育業社のマウスの腸内細菌叢を16S rRNA解析にて網羅的に比較したところ、細菌叢は施設間で大きく異なっており、腸炎抵抗性を示す日本SLC社のマウスではRoseburia属細菌が有意に増加していた。Roseburia属はクロストリジウムの一種であり、腸管保護作用を有する酪酸を産生する作用があると言われている。逆に腸炎が重症化するマウスは、腸内細菌叢の2大門であるBacteroidota門とFirmicutes門のバランスが崩れ、90%以上をFirmicutes門が占めていた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究成果で得た腸内細菌叢の違いが腸炎の重症度に与える影響についてそのメカニズムについて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた腸内細菌叢解析の一部を翌年に行うことに認め次年度使用が生まれた。 R6年度に実施して使用する予定である。
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