研究実績の概要 |
顎骨・歯槽骨の再生治療は、現在でも自家骨移植がgold standardであるが、侵襲が大きく、また、採取量に限界がある。そこで、申請者らは成長因子や間葉系幹細胞の応用を試みた。しかし、例えばBMPは移植後の副作用発現、幹細胞の応用には個人差や培養の不安定さといった課題がある。そのため、蛋白と比較し生体に対して安定性の高いplasmid DNA(pDNA)を搭載した骨誘導型遺伝子活性化基質(gene-activated matrix :GAM)の開発を試みた。siRNA等のデリバリーに有効なatelocollagen基質にBMP4をコードするnaked pDNAやmicroRNAによるGAMを作製し、ラット頭蓋骨に移植したところ、0.5-1mgの遺伝子量で一定の骨誘導効果が確認できた(Umebayashi et al,2015, Shido et al, 2020)。しかしながら、導入試薬応用時のpDNA量(0.02-0.1mg)と比較すると依然として高容量であった。そこで、新規高分子材料(Dendrigraft poly-L-lysin;DGL)を応用した自己組織化nanodevice(Nanoball)をGAMに搭載することで5μgの遺伝子量で同等の骨誘導効果を認めた(Hara et al,2022)。GAM基質の改良や搭載遺伝子の調整を行うことで骨誘導能を有するGAMの開発が可能になると考えた。本研究では、人工骨とatelocollagenの配合比、使用する人工骨や熱架橋を加えたatelocollagenを応用することでNanoballに適した基質を開発することを目的としている。本年度は各条件のGAMを作製しラット頭蓋骨の骨造成モデルならびに骨欠損モデルに移植し、至適条件を組織学的、ならびにCT画像評価で検討した。現在得られた結果をまとめ、評価を行っている最中である。
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