研究実績の概要 |
【目的】健全な顎骨の骨再生とその後のリモデリングが不可欠であるにも関わらず、高齢者や骨代謝疾患患者ではこの不全を伴う場合が多くある。近年、間葉系の幹細胞(MSC)を用いた細胞再生療法が, 膝関節再建をはじめ臨床適用され始めている。しかし、この細胞の性質上いくつかの問題点が未だ残されており、改良の必要性が指摘されている。脂肪組織由来の幹細胞(ASCs)は臨床上細胞療法で使用される場合があるが,脱分化脂肪(DFAT)細胞を用いた細胞移植による下顎骨再建に対する有用性は明確でない.本研究は, DFAT細胞を用いて下顎骨再建とインプラント周囲骨の比較,特にリモデリング不全を伴う高齢者を対象とした骨再生の有用性を評価することを目的とした.【方法】ラットの血液を採集して、血液凝固剤を入れずにプラスチック製遠心管を使用して遠心分離により自己血液フィブリン粘着ゲル(AFG)を作成した。これをコラーゲンゲルに浸潤させた。その後、30週齢SDラット上顎左側臼歯近心部にTi製インプラント体を以下の3群に分けて埋入した。1) Ti製インプラント体のみ2)インプラント体+ 脂肪組織由来幹細胞(ASCs&DFAT細胞) 3)インプラント体+脂肪組織由来幹細胞+AFG これらのラットを2,4,8,及び12週においてマイクロCT撮影して新生骨形成率の比較、研磨標本を作製し,切片をHE染色した。【結果】上顎左側臼歯近心部Ti製インプラント体の埋入時に脱分化脂肪(DFAT)細胞や脂肪細胞由来幹細胞(ASC)の同時に埋入した場合、12週後においては共に確実なオッセオインテグレーションの獲得には至らなかった。しかしながら、DFAT細胞では,炎症細胞浸潤が減少していると示唆された。さらに、これらの幹細胞とともにAFG(自己血フィブリン粘着ゲル)を同時に埋入することにより、新生骨の形成が促進される傾向を示した。
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