研究課題
本研究は,大阪大学大学院歯学,医学,人間科学研究科,東京健康長寿医療センター研究所,慶応大学医学部の研究者が,同じ参加者に対し,10年以上追跡してデータを取得し,それぞれが多角的に検討し,健康長寿の要因を探る学際的な老年学研究である「SONIC研究」を母体として進めた.本研究では,ベースライン調査に参加した70歳群約1000名,80歳群約1000名ならびに90歳群約300名の自立した生活を送る地域住民を対象に調査を行い,3年後,6年後,9年後の中間地点でのデータ収集が完了している.2023年度にはこれらのデータに加え, 70歳群55名,80歳群112名,90歳群36名に対し,12年後の追跡調査を行い,計203名のデータ収集を行った.これらのデータを用いて解析を行い,以下の結果を明らかにすることができた.①70代および80代の高齢者における咀嚼の主観的評価に関連する因子を横断解析にて明らかにし,その結果を論文にて報告した.②70歳群の高齢者において,ベースライン調査および3年後追跡調査の結果を用いて縦断解析を行い,臼歯部の咬合支持の減少が動脈硬化を進行させる危険因子のひとつである可能性を見出した.③本研究で得られた上記の結果を総合的にまとめ,学会発表を行った.上記のように,咀嚼について多面的に評価を行い,動脈硬化との関連について包括的に調査を行った.その結果,咀嚼能力と循環器疾患との関連についての基礎資料を得ることができた.
2: おおむね順調に進展している
本研究では,これまでにベースライン調査に参加した70歳群約1000名,80歳群約1000名ならびに90歳群約300名を対象に調査を行い,3年後,6年後,9年後のデータ収集を完了している.2023年度には,70歳群55名,80歳群112名,90歳群36名に対し12年後の追跡調査を実施し,さらなるデータ収集を行った.現在は,2023年度までに収集したデータを整理後,テーマに関する解析を行っている最中であり,おおむね順調に進展していると考える.
ベースライン時調査および3年後追跡調査のデータを用いて解析を行った結果,70歳群の高齢者において,臼歯部の咬合支持の状態が動脈硬化を進行させる危険因子のひとつである可能性を見出した.今後はさらに,①現在得られた結果を論文にまとめる,②他の口腔因子(咀嚼能力,口腔機能)が動脈硬化に及ぼす影響についても解析を行う,③6年後,9年後,12年後の追跡調査で得られたデータを用いた縦断解析を行うことを目標とし研究を進める予定としている.
2023年度の追跡調査の参加者人数が当初の予定を下回り,物品費が計上した予算額を大きく下回ったことにより,次年度使用額が生じたと考える.次年度も,継続して追跡調査を行うこと計画であるため,次年度使用額は物品費として使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Geriatrics & Gerontology International
巻: 1 ページ: 327-333
10.1111/ggi.14783