研究課題/領域番号 |
23K16092
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
張 暁旭 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (00965303)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | インプラント周囲炎 / 細胞移植 |
研究実績の概要 |
歯科インプラント治療は欠損歯列と機能回復に有用な治療法であるが、高頻度で起こる生物学的合併症として、難治性硬軟組織疾患であるインプラント周囲炎が近年問題となっている。インプラント周囲組織は天然歯と比較して組織抵抗性が脆弱であり、インプラント周囲組織の炎症や病変は拡大/慢性化しやすいものの、確定的な治療法は存在しない。 細胞療法は難治性疾患に有効な治療術式であるが、移植細胞数確保に必要な培養過程が安全性と倫理面で大きな障壁となり、歯科領域での実装を困難にしている。そこで研究代表者は、培養過程を経ずに短時間で自身の脂肪組織から採取可能で、硬軟組織修復能を有する非培養脂肪組織由来細胞(Stromal Vascular Fraction Cells)治療に着目した。 本研究は、SVF細胞移植治療の臨床実装を目指してインプラント周囲炎の病態形成機構を明らかにし、安定した移植法の選定を行って、新規治療法開発の基盤構築を行うことを目的とした。 これまでに6週齢雌性Wistar系ラットを用いたインプラント周囲炎モデルの作成が完了し、無菌環境下でも炎症を惹起するリガチャーモデルとは異なり、細胞内毒素LPSを用いたインプラント周囲炎病態形成を確立できた。現在、モデルについて論文化に向けてデータ解析中である。今後は、インプラント周囲炎モデルでの各種解析を予定しており、SVF細胞の最適な移植方法について検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではインプラント周囲炎モデルを作成している。実験に使用するインプラントはラット用であり、当講座の過去の研究でも多く使用されており、インプラント自体の生着率に問題はなく、実験手技に関しても抜歯即時埋入は円滑に行うことができた。インプラント周囲炎の特性上、インプラントの脱落が多く生じたが、追加実験を行うことでサンプル数を確保したため大勢に影響はなくおおむね順調に進行していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は確立したインプラント周囲炎モデル群に対し、生細胞蛍光標識試薬で標識した自己由来非培養SVF細胞を用いて移植を行う。移植方法については、①細胞移植経路、②細胞移植数、③細胞移植回数の検討が必要となるため、SVF細胞非移植群との比較を行い,総合的効果判定により決定する。加えて、健康なラットにも移植実験を行い、各種解析を行うことで、治癒関連分子の探索も行い、インプラント周囲炎の病態形成機構の手がかりをつかむ。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品購入について次年度に向けて必要最低限の購入に留めたため差額が生じた。次年度は引き続きインプラント周囲炎モデルの作成を行い、SVF細胞移植法を検討する。インプラント周囲炎モデルはインプラント脱落しやすく、移植法も確立していないことから追加実験も十分に考えられる。そのためのラット購入と細胞培養費用に充てる。
|