頭頸部癌の放射線治療における最も深刻な合併症のひとつである放射線性顎骨骨髄炎(Osteoradironecrosis of the jaw: ORN)は、患者に多大な苦痛を与え、難治性で有効な治療法がない。ORNは、放射線照射による虚血などが原因とされてきたが、近年では、これに加え、筋線維芽細胞が関わる過剰な線維化が要因のひとつとして、重要視されている。しかし、ORNの線維化における筋線維芽細胞とミトコンドリアの関連性については知見がない。本研究は、筋線維芽細胞の抗アポトーシスやミトコンドリアに着目して調査し、ORNの治療法や放射線照射後瘢痕の予防法を開発することを目的としている。本研究では、①放射線照射後やORNにおける筋線維芽細胞の抗アポトーシスとミトコンドリア機能と、②ミトコンドリア機能改善によるORNや放射線照射後の瘢痕に対する効果を動物モデルで確認していく。in vivoの実験において、下記を施行し、動物モデルの再現性を確立しているところである。6週齢のSD-ratの大腿骨および下顎骨に放射線照射15Gyもしくは30Gyを1回外照射し、1週後、6週後、12週後に評価を行う。照射前、照射後1週後、6週後、8週後に採取した軟組織において、ミトコンドリア量、ミトコンドリア機能制御に関わる因子、活性酸素、アポトーシス関連因子、低酸素誘導因子の検討を行っていく。
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