口腔粘膜は皮膚よりも早く治癒し、瘢痕ができにくいとされており、さまざまな比較が行われてきた。しかし、口腔粘膜の「治癒のしやすさ」と、周囲幹細胞の「ミトコンドリア量」や「ミトコンドリアトランスファー」との関連性は不明である。本研究は、口腔粘膜および皮膚に存在する幹細胞の違いを「ミトコンドリア量」や「ミトコンドリアトランスファー」に着目して調査し、「ミトコンドリア供給の増加」という新たなアプローチで創傷治癒に対する新規治療法を開発することを目的としている。in vitroでの実験として、ヒト口腔粘膜由来線維芽細胞とヒト皮膚由来線維芽細胞を用い、6-well plateに播種し、インキュベーター内で37℃、5%CO2の条件下で培養し、細胞数を増やした。ミトコンドリア活性化剤(AICAR)投与による反応性の違いを確認した。in vivoでの実験として、皮膚欠損モデルとして、8週齢のSDラット背部皮膚に直径8mmの円形の全層皮膚欠損創を作成し、口腔粘膜は、頬粘膜に2mm×2mmの上皮欠損を作成した。現在、実験系の確立を行っている。今後、創傷治癒過程における各細胞のミトコンドリア量とミトコンドリアトランスファーの解析を行っていく予定である。
|