現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の先行研究として、IgG4-RD の新たな疾患関連分子を同定することを目的に、IgG4-RD 患者 6 例、慢性唾液腺炎(CS)患者 3 例の顎下腺を用いて DNA マイクロアレイによる網羅的解析を行った。その結果、解析に用いた40,000 個の遺伝子のうち、CS 群と比較してIgG4-RD 群において有意に発現上昇を認めた遺伝子は1,028 個、発現減少を認めた遺伝子は692個あり、計1,720個が発現変動遺伝子として抽出された。そのDNAマイクロアレイの結果をもとにゲノムエンハンサー解析にて発現変動遺伝子を抽出したところ、CS群と比較してIgG4-RD群において有意に発現上昇を認めた遺伝子は3,053個であり、最も有意な変動を認めた遺伝子としてSMAD3が同定された。SMAD3は、細胞内TGF-βシグナル伝達系で働く主要転写因子であり、TGF-β はフィブロネクチン、コラーゲン等の細胞外マトリックスタンパク質の産生を亢進し、組織や臓器で線維化を起こすことが知られていることから、線維化促進転写因子の1つとして本研究でも注目している。そのほかにも、RELA(RELA proto-oncogene, NF-kB subunit)、ETS1(ETS proto-oncogene 1, transcription factor)が抽出された。そこで、これらについてシングルセル解析行ったところ、SMAD3は主にB細胞や肥満細胞に、RELAは免疫細胞(CD45陽性細胞)全体に、ETS1は主にT細胞に発現していた。
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