研究実績の概要 |
頭蓋顔面骨格の形態や機能は複雑であり,頭蓋・顎顔面骨格に異常を呈する多くの先天性疾患が存在することから,頭蓋・顎顔面骨格が遺伝的要因を強く受けることが知られる.さらに正常な口腔機能を獲得するためには,胎生期から小児期にかけて適切に骨組織が成長する必要があり,この骨成長プロセスは遺伝的要因だけでなく,肥満などの高栄養や逆に低栄養,さらには呼吸状態(鼻呼吸か口呼吸か),食べ方,話し方などの生活習慣によっても非常に強く影響を受ける.しかしながら,このような要因が骨成長に与える影響は要因が複雑に交絡することもあり,完全に解明されてない. 加齢や糖尿病などのエネルギー代謝性疾患では,骨芽細胞に分化する骨芽細胞前駆細胞が減少する一方で,脂肪に分化するものが増えるため,骨髄は脂肪化し骨量が減少する.よって,この前駆細胞から骨芽細胞と脂肪細胞への運命決定機構の解明が,顎顔面骨成長の理解や骨形成促進法の開発のためにも不可欠となる. T1Rファミリー(T1R1, T1R2, T1R3)はGタンパク質共役型受容体で味覚受容器としてT1R2/T1R3の複合体で甘味(糖質),T1R1/T1R3の複合体でうま味(アミノ酸・核酸)を感知する.適切な栄養素を含む食餌を深く味わい摂取することが適切な顎顔面骨格の成長に不可欠であることは言うまでもないが,近年の研究からこれらT1Rファミリーが口腔粘膜以外で各組織に存在していることが明らかとなってきた.しかしながら,各組織におけるT1Rに関して,機能のみならず,口腔と同様にヘテロダイマーを形成するのか,またリガンドが何なのかなど不明な点が多い. 本年度は,T1R3のノックアウトマウスから採取した骨芽細胞系細胞では,野生型マウスから採取した細胞に比べて,骨芽細胞分化能が減弱するデータが得られた.
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