研究課題/領域番号 |
23K16203
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂田 修三 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (60911526)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 近赤外超短パルスレーザー / 変形性顎関節症 / コールドレーザー / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
歯科臨床において、変形性顎関節症 (TMJ-OA) を伴う患者に遭遇する。顎関節症の治療法は主に対症療法であり、患者への侵襲性が少なく、有効な新規の治療法の確立が急務である。 近年開発された近赤外超短パルスレーザー (コールドレーザー) は、従来のレーザーと比較して、組織の熱損傷を惹起せず、高いエネルギーを深部組織に到達させることができる。しかしながら、コールドレーザー照射が軟骨基質代謝に及ぼす影響については解明されていない。そこで、2023年度では、コールドレーザー照射がヒト培養軟骨細胞(NHAC-Kn)の軟骨基質合成能に及ぼす影響について検討を行った。軟骨細胞に軟骨分化培地を添加し、コールドレーザー照射群においては、培地添加と同時にレーザー照射を行った。添加および照射後12時間、24時間、48時間後のmRNAを回収し、アグリカン、Ⅱ型コラーゲン、SOX9の遺伝子発現の変化をreal-time PCR法にて検討した。アグリカンおよびSOX9の遺伝子発現は、培地添加後48時間後にピークを認め、Ⅱ型コラーゲンの遺伝子発現は24時間後にピークを認めた。また、培地添加およびレーザー照射後48時間後の遺伝子発現を解析したところ、アグリカンおよびSOX9の遺伝子発現に関しては、対照群とレーザー照射群との間に有意な変化が認められなかったのに対し、Ⅱ型コラーゲンの遺伝子発現に関しては、レーザー照射群において有意な発現上昇を認めた。また、シグナル伝達経路に関しても検討を進めており、軟骨基質の産生に関わるERK pathwayの変化がレーザー照射によって認められた。今後は、さらに詳細な解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、軟骨細胞に対する軟骨基質合成能の変化を評価するとともに、シグナル伝達経路についても解析を進めており、概ね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、変形性顎関節症モデルマウスを用いて、in vivo実験系におけるコールドレーザーの軟骨組織に対する影響を検討する予定である。また併せて、シグナル伝達経路のさらに詳細な解析を進めるとともに、軟骨細胞の三次元培養系を用いて解析を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りの金額を使用しているが、論文の投稿が年度をまたいでしまったため、わずかに未使用額が生じた。次年度の論文投稿費として使用する予定である。
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