研究課題/領域番号 |
23K16211
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松村 幸恵 日本大学, 歯学部, 専修医 (00906373)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / パッチクランプ / 免疫組織学的解析 / 光遺伝学的手法 |
研究実績の概要 |
実際の小児歯科診療における経験から,小児期では、齲蝕があっても,歯髄炎や根尖性歯周炎まで進行してようやく気付くことが多いという印象を受ける。実際に,小児歯科を受診した初診患者の齲蝕罹患状況を調査したところ,齲蝕症第二度(C2)よりも歯髄炎や根尖性歯周炎などの齲蝕症第三度(C3)を有する割合が高かったと報告されている。それは,小児が痛みに鈍感だからなのではないかと考えた。三叉神経は顔面感覚の求心性神経線維を含み,その支配領域からの痛覚情報は,三叉神経脊髄路核の尾側亜核に送られ,二次ニューロンに伝えられる。ここでシナプスを替え,二次ニューロンの軸索は視床後腹内側核を介して,大脳皮質一次体性感覚野に伝えられ,口腔顔面の痛み感覚として認知される。痛覚情報を受容する幼若ラットの三叉神経脊髄路核尾側亜核でも,申請者が過去に報告した幼若ラット島皮質でのサブスタンスPのNOを介したグルタミン酸の放出確率の減少による興奮性シナプス後電流の抑制が,同じように生じているのではないだろうかと考えた。しかし,現状では,三叉神経脊髄路核尾側亜核における小児期の痛覚の特性に焦点を当てた研究は極めて少ない。そこで,痛覚情報を受容する三叉神経脊髄路核尾側亜核の神経活動に着目し,それらの局所神経回路メカニズムに幼若ラットにおける痛覚情報がどのように影響するか明らかにすることを目的として実験を行った。まず,三叉神経脊髄路核尾側亜核でのNK1受容体の発現様式を確認するために免疫組織学的解析を行った。NK1受容体は三叉神経脊髄路核尾側亜核の表層ニューロンに存在していることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は①幼若ラットの三叉神経脊髄路核尾側亜核でのNK1受容体の発現様式を確認するために免疫組織学的解析を行う②逆行性トレーサーを用いた幼若ラットの三叉神経脊髄路核尾側亜核からの投射領域についての検討し,同定した脳領域にウイルスベクターを注入し,三叉神経脊髄路核尾側亜核を含むスライス標本を作製して,光刺激による興奮性シナプス後電位の応答を解析する③幼若ラットの疼痛モデルにおいて三叉神経脊髄路核尾側亜核を含むスライス標本を作製して光刺激による興奮性シナプス後電位の応答の対照群を比較することであったが、②疼痛ストレス負荷時に三叉神経脊髄路核尾側亜核に投射ニューロンを送っている脳領域の検討について,目的としている部位に逆行性トレーサーを注入する必要があるが,注入座標の決定に訓練を要しているため時間がかかり,終了していないため現在の進行状況に関してはやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
口腔顔面領域における侵害情報は主に三叉神経脊髄路核尾側亜核へ入力する。腕傍核は,三叉神経脊髄路核尾側亜核から上行性に投射する主要な神経核の一つと言われている。幼若ラットでもそうなのか,また,幼若ラットにおいて,三叉神経脊髄路核尾側亜核の興奮性シナプス後電位をどのように変化させるのか,今後は,以下の順で研究を行う。①腕傍核に逆行性トレーサー(コレラトキシンB)を注入し,腕傍核に投射する三叉神経脊髄路核尾側亜核ニューロンの細胞体を逆行性に蛍光標識する。②①で同定した脳領域にチャネルロドプシン2を発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを注入し(AAV),三叉神経脊髄路核尾側亜核を含むスライス標本を作製して,オプトジェネティクス法を用いて三叉神経脊髄路核尾側亜核→腕傍核の上行性投射線維を特異的に活性化させ,ホールセル・パッチクランプ法にて三叉神経脊髄路核尾側亜核における抑制性および興奮性ニューロンから興奮性シナプス後電流を記録する。③疼痛モデルにおいて三叉神経脊髄路核尾側亜核を含むスライス標本を作製して光刺激による興奮性シナプス後電位の応答の対照群を比較する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会の参加をとりやめたり,実験の遅れから購入予定の試薬を購入していないため,残金が生じた。 繰越金は、令和6年度の助成金と合わせて,疼痛ストレス負荷時に幼若ラットの三叉神経脊髄路角尾側亜核に投射ニューロンを送っている脳領域についての同定ならびに,光遺伝学的手法を用いて,三叉神経脊髄路角尾側亜核の興奮性シナプス後電位をどのように変化させるのかをパッチクランプ記録を行い,検討するための物品費として使用する。
|