研究課題/領域番号 |
23K16215
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大田 隼 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (40911764)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 法歯学 / 体液種識別 / 唾液 / 口腔内常在細菌 / 劣化 |
研究実績の概要 |
犯罪現場に遺留される唾液を識別することは犯罪捜査に有益な情報を提供するが、唾液α‐アミラーゼ活性を指標とした唾液識別法は、特異性が低く、試料の劣化による影響を受けやすいという課題がある。そこで、本研究では、これまでの研究で得られた知見に加え、動物種特異性の高い細菌DNAマーカーを設計することによって、試料の劣化に頑強な新規ヒト唾液識別法を開発することを目的とした。 初年度では、研究計画に従い新規ヒト唾液識別法を開発するための準備として、試料等の収集、ヒト唾液特異的な細菌DNAマーカーの設計・評価を進めた。はじめに、新規のヒト唾液識別法の検証に用いる試料等の収集として、ヒト唾液の他にα‐アミラーゼ活性を指標とした唾液識別法では偽陽性反応を示してしまう動物唾液として、ウサギやテンジクネズミの動物唾液試料を追加収集した。次に、ヒト唾液の識別のための新規の細菌DNAマーカーとして、ヒト口腔内常在細菌であるNeisseria mucosaのasd遺伝子、Streptococcus sanguinisおよびVeillonella denticariosiの16S rRNA遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーを設計した。N. mucosaおよびS. sanguinisのDNAマーカーについては、それぞれの細菌ゲノムDNAを用いてPCR増幅特異性を確認したところ、設計したサイズの特異的なPCR増幅産物が得られ、非特異増幅産物は認められなかった。さらにN. mucosaについては、ヒト唾液とイヌ、ネコ唾液を用いた検証を行ったところ、イヌとネコの唾液からは殆ど検出されなかったため、ヒト唾液特異的な細菌DNAマーカーとして応用できる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物唾液試料の収集および新規の細菌DNAマーカーの設計は進んだものの、S. sanguinisとV. denticariosiについては生体試料を用いた評価に至っておらず、当初の計画に照らすと研究の進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、引き続き新規細菌DNAマーカーの設計・評価を進めるとともに、設計済みのStreptococcus属の細菌DNAマーカー(Streptococcus salivarius、Streptococcus oralis、およびStreptococcus sanguinis)を中心にマルチプレックス化の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は新規細菌DNAマーカーの設計に時間を要して計画の進展がやや遅れたため、研究成果の発表に至らなかった分、わずかに支出が減少した。この分は次年度以降の研究成果発表等に使用する予定である。
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