研究課題/領域番号 |
23K16268
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
河田 晋一 東京医科大学, 医学部, 助教 (00527955)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CST / FA / SSS / Urea |
研究実績の概要 |
【背景・目的】最近では、手術手技研修(CST:Cadaver Surgical Training)や臨床医学研究にも遺体を利用する環境が整いつつあるが、研修に適した防腐・固定処置法が確立していない。従来の固定法は、学生の解剖実習を対象とするホルムアルデヒド固定法(FA:Formaldehyde)であるため、皮膚、筋、内臓の質感が生体とは異なることが懸念されている。本研究では、CSTに適した遺体に対する防腐・固定処置法について検討し、本邦におけるCSTの向上および臨床医学研究の発展を目的とする。 【方法】本学に献体された遺体15体に対して、①FA、②飽和食塩溶液固定法(SSS:Saturated Salt Solution)、③尿素固定法(Urea)にて各5体ずつ処置した後、硬度計(TDM-Z2)を用いて、皮膚、筋、内臓の硬度測定を行った。また、本学で開催されたCST参加者を対象に、処置された遺体が手術研修に適しているかどうかのアンケート調査を行った。 【結果】硬度測定では、FAと比較してSSSおよびUreaで各器官の低値を示し、特に心臓と脳において軟化が目立った。SSSとUreaで比較するとほとんどの器官でSSSの方が低値を示したが、心臓においてはUreaの方が低値を示した。アンケート調査では、脳外科、消化器外科領域でSSSの評価が高かったのに対し、形成外科領域では、Ureaの評価が高かった。 【考察】遺体の個体差によって結果に影響を及ぼすことは容易に考えられるが、今後も各臨床分野に適した固定処置法の確立のためにデータの蓄積が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに3通りの防腐・固定法について、各器官の軟化作用を評価、検討すことが出来ている。また、臨床分野へのアンケート調査を行うことで、FAに対するSSS、Ureaについて概ね高評価を得ることができた。これらを踏まえて、学術集会では発表報告を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、CSTに適した遺体に対する防腐・固定処置法について検討し、本邦におけるCSTの向上および臨床医学研究の発展を目的とする。これまでに研究体の各器官の軟化作用および関節可動域効果について、基礎データの構築が出来た。また、臨床分野からもCST時におけるアンケート調査を行うことで、防腐・固定液の組成についての改良案を模索することが出来た。さらに防腐・固定処置法の改良案を検討し、データの蓄積を行うと同時に、誌上報告の準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に防腐・固定法に使用する試薬購入のための物品費の支出となるが、献体された研究体個々の身長・体重により、その試薬量を調整し注入処理を行う必要がある。 上記理由のために次年度使用額として当該助成金が生じたが、適宜試薬量の調整を行うことは可能であり、今年度の研究成果を基に新たに改良案を模索し、物品の補填を行う予定である。
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