研究課題
精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)は国内外に例がない治療ガイドラインの社会実装とその効果を検証する研究である。申請者はプロジェクトの参加施設から収集された治療データを用いて、EGUIDEの戦略により2016~2019年に収集した治療行動のデータから、いくつかのガイドライン推奨治療の実施率が実臨床で向上したことを明らかにした。EGUIDEの戦略が有効であった推奨治療がある一方、その時点で効果が得られなかった推奨治療が存在する。本研究は、効果の有無がどのような要因と関連するか検証を行い、ガイドラインの社会実装戦略をより発展させるための手がかりを明らかにすることを目的としている。講習の効果に影響する要因としてまずは、統合失調症の2016~2021年度のデータを用いて「時間」について検討すべく解析を行った。結果、2016~2019年のデータでは講習効果が見られなかった推奨治療のうち、抗うつ薬の非処方率、気分安定薬・抗てんかん薬の非処方率、持効性注射剤の使用率に効果が見られる傾向にあり、これらは2016~2021年度にかけて徐々に増加していることがわかった。このことから、講習の効果が遅れて発揮される、もしくは小さい効果が徐々に蓄積されることで長期的に見ると有効性が得られる可能性がある。来年度は2023年度のデータまで使用できる状態にクリーンアップが行われる予定のため、さらに解析を進めていく。本研究の重要な要素として、効果検証のために2016年度から続く本プロジェクトの維持と、多くの研究参加者・研究参加施設からデータを収集することが挙げられる。本年度も、データ収集が計画通り進むよう尽力し、結果、約1025名の研究参加医師のガイドライン実践度データ、約190施設分約4180症例の治療データを収集した。
2: おおむね順調に進展している
本年度も例年通りプロジェクトの継続と発展、データ収集を行うことができた。また、論文発表や学会発表なども行っていることから、本計画はおおむね順調に進展していると考えている。
R5年度は、これまでに収集した6年間分のデータを用いて解析を行い、長期的に講習効果を観察する重要性を提示することができた。また、プロジェクトの維持と、多くの研究参加者・研究参加施設からデータを収集することを例年通り継続することで、本研究に用いるデータの蓄積とクオリティの維持をおこなった。R6年度は8年間分のデータを用いて、ガイドライン推奨治療の長期的な経過を観察し、プロジェクトの効果の持続性や、遅効性の効果などの検証を行う。これらの結果から、ガイドラインの社会実装を継続的に拡大させ、精神科医療の発展にさらに寄与できることが期待される。
購入する予定であった当該課題用に常設する解析用PCおよび解析用ソフトウェアは、研究部内の既存の設備、ソフトウェアが使用可能であったため購入を見送ったことから物品費の執行が想定よりも少なかった。また、研究資料およびデータ整理・入力を依頼する予定であった研究補助アルバイト人員に適任者が見つからなかったため人件費の執行が抑えられたが、研究代表者自身で行ったため研究遂行には全く問題はない。未使用額については、R6年度は解析するデータが増えることが予想されるため、そのデータチェックや整理を行う人員を複数人雇用する予定であることから確保する。また、データの増加に伴い、大容量データ処理が可能な計算機が必要となる見込みであるため機器の能力拡張のための資金とする。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Psychiatry Research Communications
巻: 4 ページ: 100158~100158
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https://byoutai.ncnp.go.jp/eguide/