研究実績の概要 |
本研究では2016年4月の診療報酬改定以降、選定療養費の徴収義務化の対象病院が拡大したことによる医療提供およびアウトカムへの影響を検討している。 アウトカムの1つの指標として、外来医療による効果的な介入で入院を回避できる疾患群(Ambulatory care sensitive conditions; ACSC)が利用可能か検討した。ACSCは諸外国では地域医療へのアクセスや質の指標として用いられている指標であり、日本においてACSCが指標として利用可能であるかを評価するため、地域医療へのアクセスと関連する要因を探索的に検討した。 一自治体の国民健康保険レセプトデータを使用し、ACSCによる入院と、個人レベルの要因・地域レベルの要因との関連についてマルチレベルポアソン回帰モデルで分析した。その結果、個人レベルの要因では男性、高齢、併存疾患あり、低所得と、ACSC入院率の増加に関連がみられた。また、地域レベルの要因では、最寄の内科クリニックまでの距離が長くなるほどACSCによる入院率が増加する関連がみられ、特に女性や高齢者でその傾向が強いことが明らかになった。 本研究結果から、ACSCは地域医療へのアクセスを反映する要因と関連することが示唆され、地域医療のアクセスや質の評価指標としての利用可能性が示された。本研究結果は国際誌に掲載された(SSM - Population Health, 25 101565-101565, Mar, 2024) また、都道府県レベルの国民健康保険レセプトデータを用い、選定療養費の徴収義務化前後の初診患者における紹介率の変化をinterrupted time-series analysisを用いて分析し、主要な結果が得られている。
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