東日本大震災前後(2009年~2018年)の福島県における発達障がいや気分障がい、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)の精神疾患の動向を調べるために、日本政府が保有するレセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database;NDB)の解析に着手した。 また発達障がいを抱える福島県民を対象として、大規模Web調査をおこなった。調査では福島県全域から回答を募り、性別・年齢・地域の分布が当時の県内人口構成と同様になるよう無作為抽出し、生活習慣病・精神疾患の発症状況,および精神的苦痛、PTSD症状を標準的な質問票を用いて評価した。さらに家族構成、就労状況、生活習慣病、生活の満足度に関して質問し、生活の満足度はそれを決定するうえで重要視する事項まで調査した。その結果、発達障がいを抱える群は、そうでない群に比べ精神的苦痛とPTSD症状を抱える割合が高く、生活の満足度が低い傾向にあり、震災の避難区域では発達障がいを抱える住民の割合が高かった。精神的苦痛とPTSD症状の低下と有意に関連する生活習慣としては、睡眠の質に対する満足感,ほぼ毎日摂る、野菜・海藻・きのこ類,果物類,大豆製品,乳製品が挙がった。一方、朝食の欠食,ほぼ毎日摂る夜食(間食),週3回以上の遅い時間の夕食,ほぼ毎日摂る調理済みの食品は、上昇と有意に関連した。生活の満足度を決めるうえで重視された事項では、家計と資産,健康状態,生活の楽しさが上位に挙がり、配偶者と子供との同居が、精神的苦痛とPTSD症状の低下および生活の満足度の向上と有意に関連した。
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