研究課題/領域番号 |
23K16376
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
堀岡 希衣 旭川医科大学, 医学部, 客員助教 (20897730)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 低体温症 / 血小板 / PDMV / シバリング |
研究実績の概要 |
本研究は、低体温時に体温維持のために生じる不随意の骨格筋の震え(シバリング)による骨格筋組織へのダメージに対して、血小板由来微小胞がどのように作用するのか、その修復機構を解明することを目的とする。初めに、体温時に活性化血小板から放出されたPDMVに含まれる組織修復因子の特定を行うため、超遠心法によるPDMVの精製を行い、採取されたMVが血小板由来であること、さらに低温時はコントロール、脾摘コントロール、脾摘低体温の各群に比較して、PDMVが多いことをWB法によって確認した。これらのPDMVについて、申請者が以前低体温マウスモデルの末梢血液中および脾臓中の血小板を用いたRNAシークエンシングの結果より、低体温時に血中に放出されるPDMVが含んでいる可能性が高いβ-cateninをターゲットとして解析を行なった。マウス骨格筋培養細胞であるC2C12に、蛍光色素であるCMRAをラベルしたPDMVを添加したところ、細胞内への取り込みが確認された。また、C2C12培養細胞に、コントロール、低体温、脾摘コントロール、脾摘低体温の各々のマウスから採取したPDMVを添加した創傷治癒アッセイでは、低体温マウス由来PDMV添加群が最も細胞増殖が早いことが明らかとなった。さらに、低体温マウス由来PDMV添加培養細胞群におけるβ-cateninの発現が有意に増加していた。これらの所見から、低体温時に血小板から放出されるPDMVは、シバリング由来筋肉損傷治癒に働いていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス血漿からPDMVを精製する工程に時間を要したが、細胞培養実験におけるPDMVの取り込みの証明と、PDMVを取り込んだ細胞の増殖を確認できたことにより、低体温時の筋損傷にPDMVが関与しうることを示唆することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
低体温時に脾臓内血小板が活性化されることの意義の一つとして、低温に対する熱産生のためのシバリングに対する損傷治癒があることを証明するために、マウスを脾摘後、低体温から復温させるモデルを作成する。これらのマウスから腸腰筋の病理組織標本を作成し、PTAH染色によるシバリング由来筋肉損傷およびWB法によるβ-cateninの発現解析を行う。この2点の解析から、脾臓血小板から放出されたPDMVが筋肉損傷に働くのかを確認することによって、低体温時の血小板機能の新たな可能性を突き止めたい。また、PDMVに内包されるタンパク質の網羅的解析は、解析に必要となるタンパク量を収集することが難しいことから、まずは血小板のプロテオミクス解析を進めることとする。
|