研究課題/領域番号 |
23K16402
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中村 造 東京医科大学, 医学部, 准教授 (50551008)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シンク / 排管加熱 / 排水口 / 消毒薬 |
研究実績の概要 |
2023年度は集中治療部、救命センター、内科系一般病棟の手洗いシンクと吐水口の微生物汚染状況と効果的な介入方法の検討を開始した。シンクはシンクカウンター、シンク内側面、排水口、排水管内の微生物汚染状況を確認し、すべての部位から弱毒菌を含む多様な微生物の定着が確認された。他の部位に比較し、特に排水口と排水管内には緑膿菌や腸内細菌目細菌、ステノトロフォモナス・マルトフィリアなどの病原微生物が定着しやすいことが示された。洗浄消毒方法は排管加熱に加え、塩素系消毒薬やアルコール製剤、過酢酸製剤を使用し微生物の減少効果を測定中であるが、現時点では塩素系消毒薬と排管加熱が最も効果的であると推測されている。今後、詳細なデータ解析を予定している。また、シンクへの感染対策の実施により、該当部門の感染症の発生率の測定も実施しているが、シンクの感染対策を実施した部門では、院内発症の菌血症の発生率が低下する傾向にあり、今後のデータの集積と結果に注目している。 シンクに加えて吐水口の汚染状況の確認も行っており、吐水口内の整流器など複雑な構想物が特に微生物定着を促進する可能性が分かってきた。吐水口内には緑膿菌をはじめとする病原微生物の定着が頻度は低いものの確認され、また塩素に抵抗性を示す非結核性抗酸菌の定着が高率に示されている。吐水口への効果的な介入の検討も実施していく。 また既に国内学会のシンポジウムや教育講演で研究途中で得られた研究結果を報告している。2024年度はヨーロッパやアメリカで開催される国際学会で研究結果を発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集中治療部、救命センター、内科系一般病棟の手洗いシンクと吐水口の微生物汚染状況の調査を実施している。シンクはシンクカウンター、シンク内側面、排水口、排水管内の微生物汚染状況を確認し、病原性は低いものの、Pseudomonas属菌やバチルス属をはじめ、ミクロコッカスやブドウ球菌、腸内細菌目細菌など多様な微生物の定着が確認された。他の部位に比較し、特に排水口と排水管内には緑膿菌やシトロバクター、ステノトロフォモナス・マルトフィリアなどの臨床で問題となりやすい病原微生物が定着しやすいことが示された。 洗浄・消毒方法は排管加熱に加え、塩素系消毒薬やアルコール製剤、過酢酸製剤を使用し微生物の減少効果を確認した。予備研究では排管加熱が大きな役割を持つことが分かっていたたため、この排管加熱に加えどの消毒薬を併用することがより効果的かを検討することが出来た。現時点では塩素系消毒薬の併用が最も効果的という結果となっており詳細なデータ解析を予定している。また、シンクへの感染対策の実施により、該当部門の感染症の発生率の測定も実施しているが、シンクの感染対策を実施した部門では、院内発症の菌血症の発生率が低下する傾向にあることが示された。 シンクに加えて吐水口の汚染状況の確認も行っており、吐水口内の整流器など複雑な構想物が特に微生物定着を促進する可能性が分かってきた。吐水口内には緑膿菌をはじめとする病原微生物の定着が頻度は低いものの確認され、また塩素に抵抗性を示す非結核性抗酸菌の定着が効率に示されている。吐水口への効果的な介入の検討も実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
2024年は2023年の結果を解析しながら、2023年に開始した環境調査と感染対策の介入を継続する。長期のデータが得られることにより研究結果が強固になると推測される。特に排管加熱に加え、3種類の消毒薬の併用を継続することで、2023年は塩素系が最も効果的な併用薬剤であったが、長期的な使用による排管への影響も評価する。特に腐食・浸食や変色にも注目する予定である。塩素系消毒薬以外にも過酢酸による菌量低下効果は高い可能性があり、こちらも結果を検討していく予定である。 吐水口の管理として効果的な洗浄や消毒も検討するが、同時に定期交換がよりコストパフォーマンスに優れる可能性があり、どの介入方法が最も他施設でも利用可能かについて考察を加える。 また2024年度は国内、海外の複数の関連学会で研究結果の発表を行い、また他の専門家からの指摘を踏まえ研究結果を詳細に検討していく予定である。また非専門家の医療者にも水回り環境のリスクや効果的な感染対策を認識できるように非専門学会や地域セミナーなどに積極的に参加し啓発活動を行う予定である。なお、得られた研究結果を国際雑誌にも投稿予定であり広く社会に還元できるよう同時に論文作成、投稿作業を進めていく予定である。この国際雑誌への論文発表は本研究で複数の論文を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する予定であった消毒薬が想定の金額よりも低く購入できたことと、予定していた薬剤の購入が次年度にずれ込んだことがその理由である。予定していた薬剤は2024年4月から購入し使用予定である。 また現時点でも有益な結果が出ており次年度に国際学会を含め研究成果を発表予定である。また国際雑誌への投稿を行う予定である。
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