研究課題/領域番号 |
23K16424
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
西田 志穂 日本赤十字看護大学, 看護学部, 講師 (00637530)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | メタエスノグラフィー / 慢性心不全 / 意思決定 / アドバンスケアプランニング(ACP) / 終末期ケア |
研究実績の概要 |
慢性心不全患者および家族,または医療従事者は,どのようにして医療の選択の決定をくだすのか,意思決定に関して患者と家族のニーズは何か,意思決定に影響する要因は何かを明らかにすることを目的に.ACPおよび意思決定に関する研究のメタ統合におけるメタエスノグラフィーを行った. 分析により,心不全の経験に関連する課題を説明するテーマと患者が心不全の課題にどのように対処するかを説明するテーマが導かれた. 患者が直面する課題については,治療に取り組む際の医療従事者とのコミュニケーションの欠如,患者と医療従事者のミスコミュニケーション,質問や問題の表現が入院につながるのではないかという懸念などが示され,心不全患者は自分の状態に関する情報が不十分であると認識していた.また,心不全の「生命の不確実性」という点において,自覚症状の良い日と悪い日をどのように過ごすか,また,先の計画を立てることが困難であり,将来を見据えて考えることの難しさが表れていた. 心不全の課題としての死へのプロセスへの対処については,医療に関する意向については,蘇生処置の指示,事前指示,生命維持に関する考え,どこでどのように死ぬかなどの問題を含んだ「死」について考えたり話したりする患者とそうでない人がいる.心不全患者は,他の重症患者よりも生命維持のための介入を好み,DNRの優先度を示す傾向が低いが,ICD,LVAD,心臓移植などの特異的治療法が増えるにつれ,患者と医療提供者はより多くの選択肢に直面しており,独自の課題もある.したがって患者の選好はさまざまな形態で積極的に引き出されなければならない. 心不全の実体験と他の疾患について語られた経験との大きな違いは,心不全の予測不可能な性質であり,これは非常に顕著であり,心不全の終末期ケアを検討するうえで明確な課題が提起されたと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
業務とのバランスをとりながら進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度(2年目)慢性心不全患者の経験に関する研究 米国心臓協会(AHA)/米国心臓病学会(ACC)の心不全ステージ分類がStage Cまたは Dの高齢在宅療養者で,状態が安定している者10~20名にインタビューを行い,身体経験の語りから,病期やターニングポイントに注目して,医療の選択に関して決めるプロセスをどのように経験していたのかを記述する.患者の経験の語りに現れる経験,医療の選択に関して決めるプロセスをどのように経験していたのか(どのように決定しどのように 感じたのか,決定においてどのような情報や知識を望んでいるか)について,経験のメインテーマを経験の局面として捉え,本質的経験の全体構造を描く. 2025年度(最終年度):看護師の ACP・意思決定における患者支援に関する研究 国内の慢性心不全看護認定看護師と慢性疾患専門看護師(サブスペシャリティ:循環器疾患)10~20 名を対象に,慢性心不全患者への ACPの実態を調査・分析し,課題を明示する.看護師が提供している支援を抽出する.患者および看護師へのインタビュー結果から,患者の経験の局面とその局面における看護援助とを統合し,慢性心不全患者の ACP における看護支援実践モデル案の構造を描く.
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