研究課題
本研究の主な目的は、患者の死別前から死別後6か月および2年と縦断調査を行い、死別後のうつ・複雑性悲嘆のスクリーニングのための予測モデルを開発し、精度を明らかにすることである。 (1)医療者の直接評価は最小限にする、(2)通常臨床で入力している電子カルテの看護記録などの非構造化データを自然言語処理の技術を用いて予測に活用する、の2点によって、看護師等の医療者が負担なく簡便にスクリーニングできうる、精度の高い予測モデルの開発を目指す。2023年度は、2024年4月から死別後2年調査を実施するにあたって、調査票作成や各種調査資料の準備を行うとともに、死別後6か月の遺族への質問紙調査を実施した。2023年3月時点での返送数は216名で、今後も返信状況により追加を見込んでいる。死別後6か月時点における上記対象遺族のうち、うつハイリスク者は25%、複雑性悲嘆ハイリスク者は8%だった。申請者が過去に開発したスコアリングモデルを適用し、うつの予測性能は、医療者回答でAUC0.74、遺族回答でAUC0.85だった。複雑性悲嘆の予測性能は、医療者回答でAUC0.77、遺族回答でAUC0.85だった。このことから、上記スコアリングモデルは外的妥当性が高いと考えられ、また死別後6ヶ月時点のがん患者遺族のうつや複雑性悲嘆は患者の死亡前の医療者アセスメントによって予測できうることが明らかになった。電子カルテの利用に向けては、研究者間で検討を行ったが、データ取得のプロセスが煩雑であり、簡便に質問紙調査対象者とのリンケージが可能な状況とは言えない現状から、Webアンケート調査に切り替え、Web調査会社のモニターである遺族600名対象にアンケート調査を実施し、その自由記載(非構造データ)から、今後うつや複雑性悲嘆の予測モデルの開発を行う。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、2024年4月より死別後2年の遺族調査を実施する。
2024年4月~2025年10月に死別後2年の遺族に順次調査票を送付・回収する。2024年度はそれと並行して、2023年度までに実施した死別後6か月調査の結果の解析・公表を進め、Web調査および調査票の非構造化データ(自由記載)から、機械学習アルゴリズムを使用した、うつ・複雑性悲嘆の予測モデルの開発を進める。次年度(2025年度)は最終年であり、これまで得られた結果のまとめ・公表を行う。
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