研究課題
本研究は、地域医療における、高齢者の生活機能の連携を目指した「必要な時に、必要な職種のみが、適切な手段で連携する」効率的な多職種連携システムの在り方を検討することを目的とし、実施している。中でも、在宅療養高齢者の治療の中心となる、服薬管理に着目し、患者の生活や服薬管理に精通した、看護師と薬剤師を中心とする連携に焦点をあて、看薬連携の実現可能性と効果検証を目指す。初年度は、看薬連携の実態把握を目的に、先行研究レビューを実施するとともに、訪問看護師、訪問薬剤師を対象にアンケート調査を実施した。その結果、相手の役割をよく理解していると回答したものは半数に満たず、互いにやり取りする機会を設けることが出来ない理由として、「担当している者を知らず連絡できない」、「連絡したいが、忙しくて相談する時間がない」等が挙げられた。また、看薬連携の障壁については、「相手のスケジュールや状況が把握できず、連携しづらい」という回答が最も多くを占めた。また服薬管理業務については、【患者への服薬説明、麻薬の管理・廃棄、薬のセット業務】など、薬剤の管理や専門知識に基づいた業務については、薬剤師が担うことが望ましい業務と認識し、【服薬動作の援助、生活状況の聞き取り業務】など、患者に直接的に関わるような業務については、訪問看護師が担うことが望ましい業務と認識していた。今年度の実態調査の結果を踏まえ、薬連携の介入試験へ向けた「連携の定義」を具体的に検討するとともに、介入研究と並行して、研究協力機関を中心に、在宅療養患者のレジストリー構築を目指し、前向きコホート研究を新たに予定している。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、Step1実態調査として、先行研究レビューを実施するとともに、訪問看護師、訪問薬剤師を対象にアンケート調査を実施した。当初アンケートは全国調査を予定していたが、レビューを通して、看薬連携の先行知見は十分に得られていないことが明らかとなった。そこで、まずは地域を限定し、大阪府下にてアンケート調査を実施することとした。その結果、訪問看護師を対象としたアンケートでは、患者への服薬管理に費やす労力・時間の割合については、平均29.4%であり、服薬管理を負担に感じているかについては、約6割が負担に感じると回答した。薬剤師の役割をよく理解していると回答したものは半数に満たず、訪問薬剤師とのやり取りの頻度については、2割が「やり取りしたことがない」と回答し、その原因として「担当している薬剤師を知らず連絡できない」、「連絡したいが、忙しくて相談する時間がない」等が挙げられた。さらに、看薬連携の障壁については、「相手のスケジュールや状況が把握できず、連携しづらい」という回答が最も多く、7割以上を占めた。また服薬管理業務については、【患者への服薬説明、麻薬の管理・廃棄、薬のセット業務】など、薬剤の管理や専門知識に基づいた業務については、薬剤師が担うことが望ましい業務と認識し、【服薬動作の援助、生活状況の聞き取り業務】など、患者に直接的に関わるような業務については、訪問看護師が担うことが望ましい業務と認識していた。訪問薬剤師を対象としたアンケートでも、看護師の役割をよく理解していると回答したものは2割程度であり、看薬連携の障壁についても、看護師の回答と同様に「相手のスケジュールや状況が把握できず、連携しづらい」という回答が最も多かった。
今年度の実態調査の結果を踏まえ、Step2の多職種連携アプリ見直しとともに、看薬連携の介入試験へ向けた「連携の定義」を具体的に検討する予定である。現時点で、連携アプリの活用だけでなく、直接顔を合わせるきっかけを積極的に設ける必要性を踏まえ、薬剤師と看護師の同時訪問を連携の要素として設けることを検討している。加えて、介入研究と並行して、研究協力機関の訪問看護ステーション、在宅訪問支援診療所、調剤薬局を中心に、在宅療養患者のレジストリー構築を目指し、前向きコホート研究を新たに予定している。患者の医学的データだけでなく、看護・介護ケアの実態や患者の主観的な情報など、幅広くデータを蓄積するとともに、医療・介護職の実践、多職種連携の実態とその効果を検討することで、今後の地域医療での多職種連携の在り方を検討する予定である。
計画当初、実態把握のためのアンケート調査は全国調査を予定していたが、大阪府下に地域を限定したため、一部予算を次年度へ繰り越しとした。繰り越した予算は、次年度、新たに観察研究を計画として追加したため、人件費や調査員の交通費として支出する予定としている。
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