研究課題/領域番号 |
23K16604
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井上 貴博 新潟大学, 脳研究所, 助教 (20964521)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
キーワード | 神経回路 / 大脳皮質 / GABAニューロン / 軸索投射 |
研究実績の概要 |
本研究では、大脳皮質において他の皮質領域へと接続する投射性のGABAニューロンに着目し、本ニューロンが作り出す抑制性回路網の構造と機能の解明を目的に研究を進めている。抑制性GABAニューロンの多くは局所的に作用する介在ニューロンであるが、近年の報告から、離れた皮質領域へと軸索を伸ばす投射ニューロンも一定数存在することが明らかになりつつある。しかし、その機能や実体についてはほとんどわかっていないのが現状である。本年度は、各種の遺伝子改変マウスとトレーサーを用いて、本ニューロンを標識し可視化する方法の確立に取り組んだ。その結果、用いるトレーサーの種類によっては本ニューロンはほとんど標識されないものの、特定の方法を用いることにより、本ニューロンの投射様式を部分的に観察することができた。さらに、同領域において興奮性ニューロンを主に標識した場合の投射様式と比較し、本ニューロンの投射様式は大きく異なる可能性を見出した。そこで次のステップとして、本ニューロンの投射様式や分布を全脳レベルで解析するための方法の確立にも取り組んだ。従来の組織観察手法と画像処理技術を組み合わせることにより、組織切片データから脳全体を三次元再構築し可視化することができた。この方法論は、同ニューロンが作り出す回路網の全体像を把握する際に有用になると考えられる。ここまでに得られた成果や手法は、抑制性回路網の構造の理解へつながるものと期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度中に多様な標識方法を試行することができ、組織学的な所見から本ニューロンの特徴が部分的に明らかになった。そのため、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本ニューロンの標識方法について最適化を図り、まずは抑制性回路網の組織学的特徴から明らかにしていく。また本ニューロンの選択的な除去や活動操作法にも着手し、機能探索をするための実験系の構築を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室で保有済のリソースを活用したことで当初の計画よりも支出が抑えられ、次年度への使用額が生じた。次年度ではAAVベクター作製やin vivo実験に必要な消耗品、試薬、備品に使用する計画である。
|