研究課題/領域番号 |
23K16615
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小坂 祥範 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (10835242)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | tibial nerve ligation / allodynia / hydrosulfate / CSF-1R inhibitor / von Frey / microglia / spinal cord / withdrawal threshold |
研究実績の概要 |
研究目的 神経損傷や炎症に引き続いて発症する神経障害性疼痛は罹患率が高く、QOLの低下を招き、かつ根本的な治療法が確立されていないため、世界規模の健康問題となっている。3か月以上にわたって疼痛が持続するモデルマウスの脊髄後角の担当領域で、①ミクログリアが活性化され、②GABA/グリシンの作用を抑制性に導く輸送体(K+,Cl-共輸送体2:KCC2)の発現が減少し、最終的に③γ-アミノ酪酸(GABA)の抑制性が減弱することを示した(Kosaka et al. 2020)。この抑制性の減弱こそが、疼痛閾値の低下を招く。本研究は、この疼痛発症の源流にあるミクログリアを標的にした薬物介入療法(硫化水素の吸入、ミクログリア除去剤の摂取)を行い、疼痛の発症、慢性化を阻止する試みである。 研究方法 2種類の方法でミクログリアの活性化を抑制した。①硫化水素の吸入 手術日をいれて、連続5日間、マウスを40ppmの硫化水素を4時間吸引させた。②ミクロ繰り除去剤(CSF-1R阻害薬)の摂取 手術日の前1週間からミクログリア除去剤を摂取を開始し、継続する。本年度は、von Frey法を用いた行動解析を行ってその結果をまとめた。 研究成果 現在のところ、両者は同じ経過をたどった。①手術後3日目以降、疼痛閾値は低値を維持し、②21日目から徐々に閾値が上昇し、③28~35日ころには健常側と同じ程度の閾値に回復した。このことから、ミクログリアの活性化を抑制することにより、疼痛閾値を改善できることが明らかになった。しかしながら、神経損傷後の疼痛閾値の急激な現象を抑えることはできなかった。したがって、発生した疼痛の改善は可能であるが、疼痛の発生をブロックすることはできないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が確立した神経障害性疼痛モデルマウスにおいて、硫化水素の吸入ならびにミクログリア除去剤が有効であることが確認された。次の段階でそのメカニズムを明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
硫化水素吸入群、ミクログリア除去剤両群とも個体数をさらに増やし、かつ、脊髄、脛骨神経(坐骨神経)、脳のサンプリングを進めていく予定である。引き続き、脊髄における、ミクログリア数(活性化)の変化、GABA/グリシン伝達関連分子(VGAT, KCC2, の発現を解析し、硫化水素、ミクログリア除去剤の慢性疼痛改善作用のメカニズムを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
硫化水素発生装置にしばしば不具合が生じてしまった。したがって、2023年度中に予定していた動物数の半数程度しか、吸入実験を遂行することができなかった。23年度中に予定していた実験を加えて、24年度に行う予定である。
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