研究課題
変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は、可動関節の軟骨破壊を主体とする進行性の運動器疾患で未だ根本的治療薬が存在しない。早期介入で病期の進行を遅らせることが可能であるにも関わらず、軽度膝OAでは一過性の症状あるいは無症状であり、整形外科を受診することはほとんどない。また、診断には単純X線撮影を基本とするが、軟骨自体は写らないため初期OAを読み取るのは専門医でも注意を要する。整形外科以外の診療科あるいは専門家非存在下の健康施設でも実施可能なスクリーニングがあれば受診勧奨に繋がり、軽度OA患者へ適切な治療やリハビリテーションを受け、行動変容する機会を提供することができると考え、歩行から膝OAを鑑別するシステム構築を目指して本研究に着手した。令和5年4月1日~令和6年3月31日の間にロコモティブシンドローム検診に参加し研究への協力に同意が得られた者に対して本研究の歩行評価を行った。正常あるいはOAの診断は、整形外科医によるX線画像所見を経てグレード0から4まで重症度分類された。対象者は、15mの歩行路を自己選択速度にて歩行した。この時、光学式モーションキャプチャーシステムとウエアラブルシステムの両システム下で、歩行が計測された。光学式モーションキャプチャーシステムは、21個のマーカを120Hzで補足し、ポイントクラスター法にてアーチファクトを最適化し、1歩行周期を100%に規格化した3テイクの平均を代表値とした。ウエアラブルシステムは、3軸加速度センサとジャイロセンサが内蔵された慣性計測ユニットを両足の足先上部に装着し、独自アルゴリズムの内蔵ソフトより算出される21個の歩行パラメータを取得し、平均化した。参加者171名のうち131名のデータが利用可能であり、それらは匿名化および暗号化され、データセットとして完成した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は歩行データのデータベース構築を目標とした。被験は70名程度を想定していたが、それを上回る171名の参加が得られ、年度内にデータ処理まで終わらせることができたことで、研究は順調に進行していると判断した。
構築したデータベースを使って、機械学習を開始する。複数のアルゴリズムに対して、健常とOAの歩行を分類する最良のモデルを探索する。
購入予定だったウエアラブル慣性センサーシステム「Physilog 5」の次世代モデル「Physilog 6S」の発売発表を年度途中に受け、新モデルの不具合報告、精度に関する情報収集の期間を設けることとした。今年度に渉猟した情報において「Physilog 6S」で置き換え可能と判断されたため、次年度の繰越金を購入を計画している。
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eLife
巻: 12 ページ: -
10.7554/eLife.92275
Cells
巻: 12 ページ: 2161~2161
10.3390/cells12172161