研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた我が国において, サルコペニア(加齢性筋減弱症), フレイル(虚弱), ロコ モティブシンドローム(運動器症候群), 転倒骨折など運動機能低下が関連する要支援・要介護者は240万人(2019年)を越え, 要支援・要介護者全体のおよそ40%を占めている. 予防の余地が残されている運動機能低下への対応は喫緊の健康課題であり, その根幹をなす骨格筋量や機能を維持することが不可欠である. 本研究では筋量調節メカニズムの解明を大目的として, 筋細胞内におけるタンパク質代謝の制御機構の解明を小目的とし, 特にタンパク質代謝の一端を担うペプチド分解酵素アミノペプチダーゼに着目し, アミノペプチダーゼ分子による筋分化制御メカニズムの解明に取り組んだ. その結果, 種々のアミノペプチダーゼのうちロイシンを標的とするロイシンアミノペプチダーゼの発現抑制はAKTのリン酸化を増加させ, TFE3の核外移行を促進することで筋分化制御因子であるMyogeninの発現が増加し, 表現系として筋分化が促進するという興味深い成果を見出した. 従来, アミノペプチダーゼはプロテアソームによるタンパク質分解により産生されたオリゴペプチドを代謝・分解することが主たる機能であると考えられてきたが, 本研究によりペプチド分解とは異なる分化制御や細胞周期制御などといった新たな機能を有することが明らかとなった. 今後はその他のアミノペプチダーゼによる筋分化制御メカニズムの解明を目指して研究に取り組んでいく.
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