研究課題/領域番号 |
23K16671
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 健史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD) (80912526)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 視覚認知 / 目と手の協応 / インターセプト |
研究実績の概要 |
本研究の目的である,予測的な滑動性眼球運動がもたらす認知的利点を明らかにするため,本年度では移動物体を捕捉する上肢運動(インターセプト運動)に対する予測的滑動性眼球運動の効果を検証した.具体的には,標的の出現前にランダムドットキネマトグラムを呈示し,コヒーレント運動の方向を標的の移動方向を示すキューとして用いることで,実験対象者の標的移動に関する予測の程度を実験的に操作した.加えて,固視点の呈示パターンを切り替えることで予測的滑動性眼球運動を抑制/促進した.これにより,予測の程度を揃えたうえで,インターセプト運動に対する予測的滑動性眼球運動単独の影響を評価することができた.実験対象者は,PCディスプレイ上のカーソルを上肢運動によって操作し,事前に呈示されたランダムドットキネマトグラムのコヒーレンスと対応した方向へ移動する標的をなるべく早く捕捉した. 予測的滑動性眼球運動の速度はランダムドットキネマトグラムのコヒーレンスと相関し,同刺激を用いた方向弁別課題の成績と同様に,コヒーレンスを関数とするシグモイド関数で予測することができた.固視点呈示パターンの違いは,予測的滑動性眼球運動速度のシグモイド関数の傾きを変化させると同時に,インターセプト運動のパフォーマンスも変化させた.つまり,予測の程度が統制されているにも関わらず,予測的滑動性眼球運動速度に応じて,インターセプト運動の初期成分が増大した.以上の結果より,予測的滑動性眼球運動は,予測という認知プロセスそのものとは独立して,後続する視覚依存的運動制御の開始を促進する作用を持つことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標の1つであった,実験課題の構築を達成することができた.従来の研究では,視覚認知や後続の運動制御に対する予測という認知プロセスの作用と眼球運動に由来する効果とを切り分けることが困難であり,この点を解決することが本研究の目的を達成するために解決すべき主な課題であった.一方で,もう1つの目標であった本データの取得を完了することはできなかった.以上を踏まえ,進捗はやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,本年度に構築した実験課題を用いた本データの収集を行い,年度内の論文発表を目指す.それと並行して,本研究を構成する2つ目の実験課題の作成,予備実験を進めていく予定である.具体的には,現在進めている実験課題では予測的滑動性眼球運動による後続運動の促進効果を評価しているが,実験課題2では後続運動の認知的要求によって,それに先行する予測的滑動性眼球運動が変調されるのかを検証する.2つの実験課題により,予測的滑動性眼球運動とその後の運動との双方向の効果を明らかにすることができると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に購入予定であった眼球運動測定機とA/D変換器の価格高騰および一部欠品により,メーカーの見直しと代替機材の精度の確認が必要となったため,物品の購入を見送った.これにより,計画していた本データの収集に遅れが生じたため,関連学会で成果を発表するには至らず,旅費は発生しなかった.人件費については,今年度は研究代表者自身と共同著者を対象とした予備データの収集のみを行ったため,発生しなかった. 本年度中に他メーカー製品のデモが完了したため,2024年度はこれらの物品を購入し,2023年度に計画していた研究を進める予定である.具体的には,眼球運動測定機,A/D変換機,関連するソフトウェアを購入し,2023年度に構築した実験課題での本実験を開始する.
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