研究実績の概要 |
運動や栄養摂取が骨格筋に与える影響の解明が進む一方で、摂取した栄養素の消化吸収性を高める方法については、未だ詳細が明らかではない。その中でも本研究では温度に着目し、運動中や運動後に摂取する糖質・たんぱく質溶液の温度の違いが骨格筋に与える影響を明らかにすることを目的とした。 課題1として、運動中に摂取する糖質溶液の温度の違いが、組織中のグリコーゲンの貯蔵量に与える影響の検討を行った。実験動物に対して常温環境下でトレッドミル走行を行わせた。運動中には温度の異なる3つの糖質溶液 (4, 37, 55℃)のいずれかを複数回摂取させ、120分間のトレッドミル走行後に組織を摘出した。 糖質溶液を摂取することにより運動に伴う血中グルコース濃度の低下が抑制されたが、溶液温度による違いは見られなかった。吸収量の指標に差は見られなかったものの、温かい糖質溶液を摂取することにより胃排出速度を低下させた。骨格筋のグリコーゲン量は運動に伴って減少したが、温かい糖質溶液を摂取することにより、その減少が抑制された。同様に肝臓においても、温かい糖質溶液を摂取することによって運動に伴うグリコーゲン量の減少が抑制された。これらの結果は、冷たいまたは体温と近い温度の糖質溶液を摂取した際には見られなかった。以上の結果から、常温環境下において運動を行う際は、冷たい糖質溶液よりも温かい溶液を摂取する方が有効である可能性が示唆された。これらの作用機序として、運動時の基質利用や、細胞内のシグナル伝達経路などに焦点を当て現在解析を行っている。
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