研究課題/領域番号 |
23K16729
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
成塚 拓真 立正大学, データサイエンス学部, 専任講師 (60803616)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | サッカー / 最小到達時間 / 運動モデル / プレス / スペース |
研究実績の概要 |
サッカーでは,攻守いずれの立場でも,価値のあるスペースをいかに支配するかが重要となる.これは,選手個人として見ればポジショニングの問題となる.本年度はボール保持選手のポジショニングを特徴づけるため,ボール保持選手に対するプレスを定量化する手法の開発に取り組んだ. (1) 試合中の全時刻において,守備選手からボール保持選手への最小到達時間を計算し,これをプレスに関する特徴量とした.最小到達時間の計算には,Fujimura-Sugiharaモデルを用いた. (2) ボール保持選手に対する最小到達時間の時系列から次の特徴を示した:(i)ボール保持開始時よりも終了時の方が最小到達時間が小さくなる,(ii)ボール保持終了時よりも,次のボール保持開始時の方が最小到達時間が大きくなる.以上は,ボール保持の開始によって守備選手からプレスがかけられ,その後他のフリーな選手にパスを行うというプレスの典型的なダイナミクスである. (3) ボール保持選手に対するプレス強度の指標として,ボール保持中の最小到達時間の変化率を導入した.プレス強度の解析は現在進行中であり,今後はこの量を用いた選手評価に取り組む予定である. (4) ボール保持選手に対する最小到達時間とボールロストの関係を定量的に調べた.ボール保持選手のプレーをボール保持プレー,ダイレクトプレー,試合再開プレーの3つに分類し,それぞれに対して最小到達時間とボールロスト確率の関係を調べた.その結果,ボール保持プレーとダイレクトプレーの場合は,最小到達時間が小さくなるほどボールロスト確率が大きくなるという定量的な関係が得られたが,試合再開プレーの場合は異なるふるまいとなった. 以上の成果は,2023年度スポーツデータサイエンスコンペティションのサッカー部門において入賞として評価された.次年度以降は今回の結果を踏まえてさらに発展的な解析を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,最小到達時間に基づくサッカーのスペース評価の枠組みを理論的・実践的に発展させることである.本年度は,選手に対する最小到達時間を導入することでボール保持選手に対するプレスを定量化し,今後の研究の基盤を構築することができた.よって,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,最小到達時間に基づくプレスの研究を発展させる.特に,次年度はサッカーの大規模なデータセットが入手できる見込みであるため,このデータセットを使用したデータ解析に取り組む.具体的な実施項目は以下の通りである. (1) Andrienko et al. 2017の手法を参考に,プレスの向きの情報を取り入れた解析を行う. (2) 最小到達時間からボール保持選手に対するプレス強度とボール保持選手のプレス耐性を定量化する. (3) ボール保持選手に対するプレス強度とボール所持選手のプレス耐性から選手・チーム評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していなかった研究協力者との打ち合わせ(琉球大学,2泊3日)が発生したため.
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備考 |
週刊エコノミスト「学者が斬る・視点争点」への連載(全5回),第101巻19号・25号・30号・35号・40号.
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