研究課題/領域番号 |
23K16767
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
田中 誠也 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (40897906)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リン脂質 / ドコサヘキサエン酸 / 安定同位体 / 異性体 / ホスファチジルコリン |
研究実績の概要 |
脳機能維持に必須の脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)は、欠乏すると精神疾患、アルツハイマー病などの神経疾患の発症につながる。DHAは体内合成率が低く、摂取したDHAを効率的に脳へ輸送することが重要である。脳には元々DHAが存在することから、投与DHAと内因性DHAを明確に区別して分析しなければ、投与DHAの脳への輸送を厳密に評価できない。 本研究では、安定同位体標識DHAを用い投与DHAと内因性DHAを質量分析計により明確に区別し、DHAの摂取形態により脳中での投与DHA量がどのように変化するかを調べることを目的とした。令和5年度は、安定同位体標識DHAとDHA結合リゾリン脂質(リゾホスファチジルコリン)の合成を行った。DHAが結合したリゾホスファチジルコリン(LPC)についてもsn-1位とsn-2位の異性体が分離されるような精製法の確立を行い、令和6年度の投与試験の準備を実施した。また手始めにDHAエチルエステルの体内動態を調べるため、ICRマウスに安定同位体標識DHAエチルエステルを単回経口投与し、4h,24h後に解剖を行い、一定期間後のDHAの代謝性や脳内移行性を調べた。また5日間反復投与群も設け、単回投与と反復投与の差異も確認した。その結果、脳内に特異的に存在するsn-1位DHA結合型リン脂質は食事由来のDHA(外因性DHA)が比較的取り込まれやすい分子種であることが示された。令和6年度に脂質の種類(リゾホスファチジルコリン、遊離脂肪酸、エチルエステル)によるDHAの脳移行性やリン脂質異性体の機能性解析について研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は安定同位体標識ドコサヘキサエン酸(DHA)を合成することおよびその標識DHAが結合したリゾホスファチジルコリンを作製する予定であり、年度内に問題なく完了した。また安定同位体標識DHAエチルエステルを単回投与および反復投与を実施し、解剖を行い脳中の標識DHA結合リン脂質の体内動態をリン脂質分子種を区別して分析することで、詳細に解析した。
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今後の研究の推進方策 |
合成した安定同位体標識DHAを用いて、脳へのDHAの輸送性試験を行う。リボホスファチジルコリン(DHA-LPC)、遊離DHA、DHA-エチルエステルの3種の投与形態を比較し、脳内DHA代謝を調べる。さらに食事摂取のDHAが脳内のどの部位でどのような脂質プロファイルで存在するかについても質量分析計を用いて定量する。特にリン脂質異性体の分布についても精査する。脳中で存在するDHA含有PC異性体について、病態マウスなどの存在量を測定することで、生理機能との関連を考察する予定である。
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