研究課題/領域番号 |
23K16769
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
足立 拓史 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (10849946)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 遠隔医療 / ライフスタイル / 疾病管理 / 循環器病予防 / 身体活動量 / 行動変容 / モバイルアプリ / データサイエンス |
研究実績の概要 |
情報通信技術の発達により、遠隔ライフスタイル指導が急速に拡大している。本領域における従来の研究は、遠隔介入の実行可能性と安全性、遠隔介入の優位性を示すものが多かったが、インターネットを介して蓄積される膨大なデータを個別化介入で利活用する方法論については課題が多い。 本研究では、モバイルアプリを用いた遠隔ライフスタイル指導の大規模データベースを構築し、個別化ライフスタイル指導のプロセス管理に資するエビデンスを創出することを目的としている。 所属機関の倫理申請は予定通り2022年度に完了し、2023年度は共同研究期間機関と解析用データベースの構築に取り組んだ。半年間のプログラムに参加した約6000名について、週ごとのライフログデータを24週間分時系列データ化した。冠危険因子の是正状況、身体活動量や体重などのライフスタイル変化(行動変容)をアウトカムとした解析を実施し、関連する対象者特性、アプリ利用状況、ライフスタイルの時系列変化パターン等を探索した。まずは、このような生物統計学的手法を用いた探索的検討について国内外の主要学会に演題登録を行った。 加えて、特に行動変容が起こりやすい開始初期の目標設定に関するデータを参加者、指導者双方の点から分析する準備を進めた。テキスト情報、データの格納状況より、まずは指導者側のテキスト情報を分析することとし、2023年度は自然言語処理を用いた分析を可能とするためのデザインとデータベース構築の計画を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠隔ライフスタイル指導のプロセス管理のあり方を検討する本申請課題では、参加者のライフスタイル改善を予測する多因子を分析することが第一歩となる。そのために、①生物統計学的手法を用いた予測因子の探索、②自然言語処理等の情報科学の手法を応用した分析、の2つの側面から包括的解析に取り組み、遠隔ライフスタイル指導における個別化のプロセス管理に資するエビデンスを創出する。 2023年度は、上記①に必要な大規模かつ縦断的解析が可能なデータベースを構築することができ、主要国際学会に演題登録を行うことができた。さらに、遠隔ライフスタイル介入特有の指標である、ライフスタイルデータの時系列解析やモバイルアプリの利用状況等の解析も進んでおり、主要学会での報告、論文発表により継続的に成果発信できる体制となっている。 ②についても目標設定に関わるテキスト情報の分析に向けた十分なディスカッションを協力機関と行うことができ、既に自然言語処理の実行に向けた準備が進んでいる。具体的な解析は2024年度に実施し、論文発表までを目標とした作業スケジュールを作成している 以上より、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
既に実施できている6000名のライフスタイルの時系列データを解析した知見について、主要学会で報告するとともに国際誌への論文投稿を進める。「身体活動量」を中心とした複数の解析テーマに着手できており、今後は他のライフスタイル因子の検討、保有するリスク因子で解析対象を絞った分析についても進めていく。加えて、遠隔ライフスタイル指導に特有の指標として、セルフモニタリングの継続的な実行状況、モバイルアプリの使用状況も解析に組み込んでおり、本研究テーマならではの成果に繋げる。 目標設定に関するテキスト分析については、2023年度に作成した解析計画に則って分析を行い(共同しているデータサイエンティストの協力を得る)、主要学会での演題登録と論文作成を並行して行う。 2024年度は上記の通り、成果報告を積極的に行い知見を集積しつつ、遠隔指導のポイントや従来にはなかった新たな着眼点について整理し、遠隔での個別化指導のプロセス管理に関するknow-how整理に着手することまでを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に主要国際学会での発表を行う予定であったが、所属機関ならびに共同研究機関の体制変更があり、研究体制構築とデータベース構築に時間を要した。そのため、予定していた解析結果の報告を行うための次年度使用の必要性が生じた。また、ベース構築・分析に必要な人件費は、自然言語処理の準備段階で必要となるが、具体的な作業は2024年度に行うことに変更したため、次年度使用の必要性が生じた。以上より、研究の進捗は順調であるものの、学会報告の時期、作業スケジュールの変更により、次年度使用分が発生しており、成果報告と研究推進を計画通り進めるために必要な予算として翌年度分として請求した。
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