研究課題/領域番号 |
23K16770
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
玉井 康将 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (90913905)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / パルミチン酸 / 細胞外小胞 |
研究実績の概要 |
近年、肝炎ウイルス排除後や代謝異常関連脂肪性肝疾患からの肝発癌が世界的に増加しており、局所療法が適応とならない進行肝細胞癌に対して免疫チェックポイント阻害剤の投与が始まっている。脂肪成分を多く含む肝細胞癌は免疫チェックポイント阻害剤に対する反応性が異なることや、過酸化脂質は発癌や炎症の増悪に関与することが知られており、肝細胞癌の発症や進行において脂質や過酸化脂質成分は重要な役割を担うことが示唆される。 本研究では肝硬変肝で脂質や過酸化脂質成分が変動するという先行研究の結果を発展させ、ヒト肝癌細胞株や肝癌モデルマウスにBCAAを投与する実験系を用いて「脂質や過酸化脂質成分、さらには過酸化脂質により惹起される炎症細胞の活性化が肝細胞癌の発症や増殖に関与する分子メカニズムを解明する」ことを目的とする。 令和5(2023)年度は、肝癌細胞株を用いて、肝細胞における脂肪成分の影響を検討した。肝癌細胞株(HepG2,Hep3B)にパルミチン酸を添加し、脂肪毒性により障害肝癌細胞に脂肪滴を蓄積させた。Oil-Red O染色やAdipophilin染色により脂肪滴が有意に上昇していることを確認した。RT-PCRではSREBP-1cやTGFβが有意に上昇していた。上清を回収し、超遠心により細胞外小胞(EV)を分離した。パルミチン酸を添加した障害肝細胞癌中の上清には有意にEVが増加していた。回収したEVを免疫細胞に添加して、癌免疫微小環境への影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪滴を増加させて障害肝癌細胞からはより多くの細胞外小胞が放出されており、癌免疫微小環境に影響を与えていた。マウス全血からFicollにてPBMCを分離して、MACSでCD8+T細胞を回収した。EVを添加し、PD1、CTLA4、TIM3、LAG3、TIGITなどの遺伝子発現を比較した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は分子鎖アミノ酸(BCAA)の添加により、脂肪滴やEVによる免疫微小環境への影響への差異を検討する。さらに、脂肪性肝炎から発癌するマウスとしてSTAM(steric animal model)マウス(20週)とCDAA-HFD(choline-deficient L-amino acid defined high fat diet)マウス(24週)に、BCAAまたは生理食塩水を最後の8週間毎日経口投与し、肝癌部と非癌部に分けて肝臓と血液を回収する。肝癌の数とサイズや、肝癌部と非癌部の脂質や過酸化脂質代謝関連・酸化関連・酸化還元酵素関連・癌関連・細胞周期関連・オートファジー関連・細胞死経路・BCAA代謝関連の遺伝子発現やタンパク質発現により、肝癌における脂質や過酸化脂質代謝関連経路と発癌や癌増殖との関連について検討する。次に、肝癌の増殖に関与する免疫細胞(マクロファージやT細胞や好中球等を含む)の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
脂質解析に使用する支出が事前度に繰越しになった。脂肪性肝炎から発癌するマウスモデルの解析に使用する予定である。
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