研究課題
認知症は加齢の他、糖尿病などの様々な後天的因子と関連している。耐糖能異常はアルツハイマー型認知症(AD)の発症を2~4倍に増加させることが報告され、また糖尿病合併ADモデルマウスでは神経細胞におけるインスリン感受性の低下が引き起こされていることが明らかとなった。一方、歯周病は加齢により増加し、歯槽骨の破壊を来す疾患であるが、糖尿病など様々な全身疾患の増悪因子となることが明らかとなってきた。中でも認知症との関連が注目を集めており、歯周病患者は健常者と比較しアルツハイマー型認知症(AD)の発症リスクが約1.7倍になることが報告された。また歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis (Pg)をマウスに投与すると認知機能が低下し、炎症性サイトカインや代表的なADの病理であるアミロイドβ(Aβ)の沈着が海馬において増加することが報告された。しかし一方で、歯周病原細菌感染が脳組織のインスリン感受性に与える影響に焦点を当てた報告は乏しいのが現状である。そこで本研究では、歯周病が神経系細胞のインスリンシグナルやグルコース代謝に与える影響を調査するとともに、記憶形成関連因子を低下させるかに着目して研究を行うこととした。これまでの先行研究では主に脳内の免疫担当細胞であるミクログリアを介して歯周病が認知機能へ悪影響を与えるという報告が散見されたため、本年度は代表的な歯周病原細菌である Pgが複数種の神経系細胞に与える直接的な影響を主に調査した。現在までにRNA-seqを用いた網羅的解析により複数の発現変動遺伝子(DEGs, Differentially Expressed Genes)を同定している。
2: おおむね順調に進展している
現在までにRNA-seqを用いてPgによって影響を受ける遺伝子を複数同定することができた。現在、この同定した遺伝子に関してqPCR法などを用いて詳細な解析を進めている。またpathway解析により得られた情報から、関連するタンパク質に着目した解析も進めている。おおむね予定通りに進んでいる。
これまでに行った解析を継続して行う。特に関連するタンパク質に着目した解析を行う予定である。また研究成果の論文化を目指していく。
【次年度使用額が生じた理由】当初は1年目に「マウスを用いた行動実験」「LCMSによる2-デオキシグルコースの測定実験」を主として行う予定であったが、研究協力者が保有するLCMSに不具合が発生したため、本年度は主に培養細胞を用いた実験に時間を割いた。そのため2年目にマウスを用いた実験を遂行する予定で、動物実験にかかる経費、LCMS実験やタンパク質分析に必要な物品(カラム)や試薬に使用する金額を翌年度に持ち越すことにした。【使用計画】「LCMSによる定量解析実験」に必要な物品(逆相カラム、バイアル瓶など)や「タンパク質分析」に必要な試薬(ウエスタンブロッティング関連試薬)を購入する予定である。
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