研究課題/領域番号 |
23K16826
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
別當 朋広 北里大学, 医学部, 助教 (40623202)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脂肪肝 / マクロファージ / 神経ペプチド |
研究実績の概要 |
内臓に過剰の脂肪組織が蓄積する肥満は今や人口の25%を占める。肥満に伴い近年、最も多くみられる肝疾患は代謝異常に関連した代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)である。MASLDに伴う炎症は脂肪肝炎を発症し、さらに肝線維化、肝硬変、肝癌へと進行する。一方、神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチドCGRPが、CGRP受容体のサブユニットである受容体活性調節タンパク質1(RAMP1)に作用して炎症を抑制する。これまでに我々はCGRPがマクロファージにおけるRAMP1受容体に作用してサイトカイン産生を抑制することを肝臓や腸管のマウス炎症モデルで見いだした。そこで、本研究ではRAMP1シグナルがMASLDにおける肝炎を抑制することに寄与するかを解明することを目的とした。雄性RAMP1欠損マウス(RAMP1-/-)または野生型マウス(WT)に、普通食(ND)または高脂肪食(HFD)を12週間給餌した。HFDを給餌したRAMP1-/-マウスの体重は、HFD給餌WTマウスよりも重く、肝臓重量、ALT、総コレステロール、グルコースなども高値を示した。HFD給餌RAMP1-/-マウスは、HFD給餌WTマウスに比べて、αSMAやCollagen1a1などの線維化関連遺伝子発現や、TNFやIL-1βなどの炎症関連遺伝子発現レベルが高かった。フローサイトメトリー解析では、HFD給餌RAMP1-/-マウスおよびWTマウスともに肝常在性マクロファージであるクッパー細胞(KC)が減少した。さらにHFD給餌WTマウスでは単球由来KCsが増加したが、HFD給餌RAMP1-/-マウスは単球由来KCsと単球由来マクロファージとが増加した。これらの結果から、RAMP1シグナルは、脂肪肝の炎症、線維化ならびに炎症性マクロファージ集積を阻害して食事誘発性脂肪性肝疾患の進展を抑制する可能性が示唆された。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。マウス食事誘発性脂肪肝モデルを用いて、RAMP1シグナルが脂肪肝炎症に関与することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画に沿って、本研究を進めていく。RAMP1シグナルがマクロファージの炎症抑制に働くことを細胞培養系で明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
フローサイトメトリー解析に必要な物品の調達に時間がかかり、これに関連する消耗品を購入することができなかったことから次年度に繰り越した。さらに研究進展により、実験動物を多数使用する予定となり、このための動物飼育費用のために予算額を取り分ける必要が生じた。これらに加え、来年度では実験動物関連と細胞培養関連を中心とした消耗品の補充及び実験動物の購入費に充てる予定である。
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