現代社会は慢性的な疲労に悩んでいる人々が多く存在している。疲労は活動能力が低下した状態であり、疲労には不快感及び活動意欲の低下などの疲労感が生じる。この疲労感により、過剰にパフォーマンスが抑制されることが慢性疲労の原因の一つであるとされている。疲労感がパフォーマンス調整に関わっていることは部分的に明らかにされているが、そもそも疲労感がどのような情報に基づいて脳内で生成されているのか、疲労の程度に応じてどのようにパフォーマンスが調整されているかという2つの根本的な神経メカニズムは解明されていない。また、疲労感は活動量だけでなく、活動量を本人がどのように認識しているかという「活動量の認知」が疲労感の程度を決定している可能性がある。本研究では、活動量の認知が疲労感の生成・パフォーマンスに与える影響について脳波計測により明らかにすることを目的とする。2023年度はそれらの中で疲労感の生成を中心に検討する研究計画であった。 2023年度は疲労時の脳活動を精緻に評価するために使用する脳波計の検討を行うとともに、被験者が感じる疲労負荷課題の時間を操作する実験系を作成した。その結果、被験者が実際に行った負荷課題時間を錯誤させるアプローチが可能であることを確認した。また、活動量の認知が疲労感の生成に与える影響を明らかにするために、課題負荷時間および被験者数が妥当であるか、再度検討し、実際に健常成人を対象に実験を実施した。さらに、活動量の認知が疲労感の生成に与える影響を評価するための解析法の検討も行った。
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